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2020 年度 実績報告書

X線機器による圧痕検出法と同定法の開発

計画研究

研究領域土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究
研究課題/領域番号 20H05810
研究機関熊本大学

研究代表者

小畑 弘己  熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80274679)

研究期間 (年度) 2020-11-19 – 2025-03-31
キーワード基礎研究 / 軟X線機器 / 圧痕種実 / 圧痕昆虫 / 付着炭化物 / AI / 同定
研究実績の概要

本年度の主な活動として、来年度より開始する鹿児島県立埋蔵文化財センターと北海道埋蔵文化財センターにおける軟X線機器による土器圧痕調査のための準備を実施した。具体的には調査のための器材・消耗品の調達、調査員(技術支援者)の募集・面接・採用事務、熊本大学における調査員の技術研修(5日間)のためのマニュアル作りと実際の研修を行った。
研究面においては、宮崎県や福岡県内の縄文時代後期~晩期の土器資料を素材に、X線CT撮影およびその委託作業を実施し、現在作成中の論文のデータとした。これらのデータ作成過程で、軟X線機器→簡易X線CT撮影→3D画像作成の作業過程を検証しながら、潜在圧痕の炭素抽出法なども試行し、記録台帳の様式の整備を含め、基礎研究で行う一連の作業プロセスをほぼ確立した。そして、試料の各計画研究班との共有やその流れをシュミレーションし、2021年度からの本格的調査に備えた。
さらには軟X線画像のAIによる同定法開発のため、現生標本資料(粘土板)を多量に作成し、内部の植物種実や昆虫圧痕の軟X線画像を作成した。この画像をもとに熊本大学工学部ビッグデータ研究者の協力を経て、ディープランニングおよび同定実験を実施した。精度を上げるためにはさらに多量のデータを要するため、来年度も現生サンプル作成と軟X線撮影を実施するつもりである。
圧痕調査で検出したレプリカ資料の観察と同定、写真撮影のため、マイクロスコープ付きの電子顕微鏡を購入、研究室に配置した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2021年度以降の領域全体の基礎研究の推進に大きな役割を果たす軟X線装置を行政機関(現地)で操作・調査する調査員(技術支援者)の人選と採用、技術研修の実施が滞りなく実施できたことは大きな成果であった。研修においては、X線技術者講習、圧痕X線調査法実習を軸に、これら現地でのX線による調査を統括する研究室の技術支援者との連絡報、情報交換のシステムなどを現地調査員とともに改善、構築できたことも、今後の調査を円滑に進めるために貴重な実習期間であった。
AIによる同定法の開発は、実験レベルであるが、60~70%の確率で正解答が得られ、高い精度を得られる感触を得た。さらに現生資料のディープランニングが行われればさらに精度が増し、実用化へ向けて加速化できる見通しがたった。本研究は開発研究として2023年度に外部委託で実施する予定であったので、早期の研究着手とその手ごたえを得たのは大きな収穫であった。

今後の研究の推進方策

2021年度からは、鹿児島県立埋蔵文化財センターと北海道埋蔵文化財センターに設置した軟X線装置により、基礎研究としての圧痕調査が本格化する。この調査の推進に伴い、新たな試料が多量に得られる可能性がある。鹿児島県においては、縄文時代末~弥生時代の大陸系穀物の編年を確立するために、科研A(19H00541)で開発した手法を用いて、この時期の土器を中心に作業を開始したい。また、北海道においては縄文時代前期~中期の円筒土器文化期の土器を軸に、前後する時期も合わせ、道南地域の土器に取り組みたい。この調査においてもB01班やB02班と協業して、多数の潜在圧痕種実(穀物)の年代測定を実施したいと考えている。これは、本領域研究の目的の一つである、確実な穀物拡散時期の特定につながり、現状で最も成果を上げうる可能性のある研究であるため、重点的に取り組みたいと考えている。
AIによる同定法の開発は順調に推移していることから、継続的に実施していきたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 田螺山遺跡発見のコクゾウムシ圧痕2020

    • 著者名/発表者名
      小畑弘己
    • 雑誌名

      河姆渡と良渚 -中国稲作文面の起源-

      巻: - ページ: 111-118

  • [学会発表] X線機器による福岡県江辻遺跡SX-01出土土器の圧痕調査成果2020

    • 著者名/発表者名
      小畑弘己
    • 学会等名
      日本植生史学会第35回大会
  • [学会発表] 宮古島における土器圧痕調査の成果と穀物利用2020

    • 著者名/発表者名
      真邉 彩・千田寛之・久貝弥嗣・小畑弘己
    • 学会等名
      日本植生史学会第35回大会
  • [備考] 土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究

    • URL

      http://www.fhss.kumamoto-u.ac.jp/archaeology/earthenware/

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公開日: 2021-12-27  

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