研究領域 | 土器を掘る:22世紀型考古資料学の構築と社会実装をめざした技術開発型研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05814
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小林 謙一 中央大学, 文学部, 教授 (80303296)
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研究分担者 |
柴田 昌児 愛媛大学, 埋蔵文化財調査室, 教授 (10735286)
根岸 洋 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20726640)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 炭素14年代測定 / 先史文化の実年代化 / 縄文時代 / 年代決定法 / 弥生時代 |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍の影響のため、出張できなかった地域があり、計画したが年代測定用試料を収集できなかった地域があるほか、東アジアの中での年代対比のための現地調査ができなかった点がある。また、対面での打ち合わせはできなかったが、この点はwebにより十分おこなうことができた。国内調査は岩手県の資料調査と年代測定用試料採取と測定、宮城県北小松遺跡の年代測定、秋田県鐙田遺跡縄文晩期資料、愛媛県内の縄文晩期~弥生移行期の資料収集と年代測定をおこなった。鐙田遺跡については根岸分担者が以前に発掘した成果も含めて、関連した研究計画班B01と共同して測定を進め、レポートを共同作成した。北小松遺跡については多数の測定例から晩期細別時期と弥生移行期の年代、および同位体比からの陸生植物中心の食性を明らかにすることができ、レポートを公表した。また、コロナ禍の影響が少ない関東・東海において、東京都下宅部遺跡 下布田遺跡、既存の収集資料である栃木県刈沼遺跡について研究を実施、測定結果についてのレポートを公表または準備中である。 特に植物質食料に関係した年代測定を重点的におこない、並行して植物遺体の圧痕レプリカ調査もおこなった。その結果、東京都府中市の縄文中期前半の深鉢において、模様である隆線にのみ故意に埋め込んだと思われるダイズの圧痕を見いだした。またエゴマの多重圧痕例について確認した。さらに南西関東で類例が少ない弥生前期~中期のアワ・ヒエの圧痕を検出した。この他、年代と圧痕調査を並行して進め、神奈川県大日野原遺跡ではコクゾウムシの圧痕、東京都三鷹市丸山A遺跡では縄紋後期のシソ属と思われる圧痕等を検出し、伴出資料の年代測定を進めた。 また、既存の試料を活用した過去の年代研究成果の再検討として、較正曲線IntCalが20に校訂されているので、これまでの成果について再計算をおこない、検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により試料収集計画に若干の遅れが生じているが、既存の試料を再検討し測定をおこなうことや、出張可能な地域において試料採取をおこなうことで、概ね予定通りの年代測定を進めることができた。打ち合わせは、直接対面でおこなうことができなかったが、webを利用することで、さほどの支障なく互いの新着状況の確認や摺り合わせもおこなうことができた。また、新たに測定するばかりではなく、改訂された較正曲線などを活用して、既存の測定値を再検討し、新たな結果と統合することで、年代的な再構成を図っている。以上から、若干の地域において予定通り測定できなかった部分があるが、国内の試料を中心に既存の採取済み・測定済み試料の再検討を含めて、列島における先史文化の高精度年代化の補足調査・研究は進んでおり、おおよそは計画通り研究を進めたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的として、縄文-弥生の高精度編年を推進、圧痕土器付着物・包埋炭化物・微量炭素のAMS・IRMS測定、遺跡・遺構形成過程、生業活動の時間的復元の3点とし、研究を進める。 分担者と協力して、北海道・東北・関東・中四国・九州の年代測定用試料を積極的に収集し、AMS・IRMS測定を進める。縄文-弥生時代の細かな土器編年に即した高精度の年代的整備を遂行する。目標としては0年単位の縄文時代の年代区分を目指す。 年代測定・同位体比分析と同時に植物遺体圧痕レプリカ調査をおこない、土器内残存の包埋炭化物の検出に努め、他の研究計画班や公募研究ともリンクして、微量測定をすすめる。先史遺跡の発掘調査にも計画し、遺跡形成過程に合致させた考古学コンテクストの試料を、細かなサンプリングで収集し、複数の方法による年代測定により高精度の時間的復元を果たす。 また、状況に応じて、朝鮮半島、中国などの国外や、南西諸島などの試料情報の収集に努め、可能であれば実際の資料を調査したい。
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備考 |
年代測定データ一覧を掲載
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