研究領域 | イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造 |
研究課題/領域番号 |
20H05827
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
近藤 信彰 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90274993)
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研究分担者 |
秋葉 淳 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00375601)
黛 秋津 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00451980)
長縄 宣博 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (30451389)
太田 信宏 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (40345319)
真下 裕之 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (70303899)
堀井 優 同志社大学, 文学部, 教授 (70399161)
馬場 多聞 立命館大学, 文学部, 准教授 (70756501)
沖 祐太郎 九州大学, 法学研究院, 専門研究員 (90737579)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | イスラーム国家 / コネクティビティ / 国際法 / 帝国エリート |
研究実績の概要 |
プロジェクトも3年目に入り、前半はオンラインを中心とした国内のワークショップ中心の活動であったが、10月以降、日本の入国制限が緩和されたことから、海外調査や海外からの招聘も可能となった。 2回のセミナー、8回のワークショップ(うち4回は国際)、1回の共催の国際会議を開催した。内容は以下の通り。M. Khodarkovsky教授研究セミナー (2022年5月20日)、セミナー“Inter-minority Tensions and Development of Contested Categories of Kurdish Mobilisation”(6月19日)、ワークショップ「近世における権力とコネクティビティ」(7月19日)、「帝国秩序とコネクティビティ」(9月22日)、「信頼を可視化する」(1月7日)、「オスマン・カリフ制をめぐる議論」(2023年1月21日)、「近世の海洋空間をめぐる異文化接触と信頼~海賊への対応を事例として~」(2月19日)、 “Trade, Diplomacy and Capitulations in the Early Modern World”(3月3日)、“Japonya’da Sohbet-i Osmaniye-6”(3月6日)、「オスマン朝治下地中海の法の重層性と領海性」(3月9日)、ワークショップ “Circles of Trust: Marriage, Village Guarantors, and Private Reading Groups in the Ottoman Empire” (3月25日)、環 Pacific Rim Ottomanists’ Conference (3月22-23日)。 海外の研究者としてはMichael Talbot氏(Greenwich大学)、Tommaso Stefini氏(European University Institute)の2名を招聘した。Talbot氏はオスマン=イギリス外交、キャピチュレーション、海洋法などについて最新の知見を披露した。Stefini氏はヴェネツィア=オスマン関係やキャピチュレーションの適応、異教徒の扱いについて、両者の側から検討した。いずれからも、本研究のテーマと関わる重要な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度まで、外交や国際関係を中心に国内ワークショップを重ねてきたが、国家を支えるコネクティビティ、あるいは国家が利用するコネクティビティについては、十分な時間を取ることができていなかった。本年度は、前半に、権力や帝国秩序との関連でコネクティビティを検討することができた。とりわけ、ムガル帝国のマンサブ制とオスマン帝国のイルミエを扱った9月のワークショップでは、縦のベクトルの帝国秩序と横のベクトルのコネクティビティがどのようにかみ合っていたかを示す、重要な機会となった。一方、オスマン帝国の近代カリフ制を扱った1月のワークショップでは、カリフ制というイスラームに本源的に存在しているかのように考えられがちな制度が、立憲主義と国民主権が前提とされたなかで、状況に応じて政治的に利用されていたことが指摘された。国家があくまで前提であった点は、近世の諸国家にも通じ、重要なポイントである。こうした研究の進展を踏まえ、2024年度刊行予定のイスラーム信頼学シリーズ第5巻『権力とネットワーク』の章立てを考え、方針を定めることができた。 また、ようやく海外からの招聘研究者と議論したり、海外での招待講演を行って参加者と議論したりするなかで、世界の学界における本研究の位置づけがより明確化してきた。この意味で、本研究は概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究グループ内での議論はある程度まとまってきたが、イスラーム信頼学シリーズの刊行へ向けて、より議論を深めていく必要がある。特に、原稿の締切が2024年度の前半であることを考えると、今年度中に内容の検討の機会を設けておく必要がある。 また、今後は外部から研究者を招いてワークショップを行うことを重視する。特に、国際法や国際政治、国際関係など隣接諸分野の研究者を招きたい。社会科学はヨーロッパで育まれ、ヨーロッパを主に対象とする側面が強く、極めてユーロセントリックな構造を持っている。人文学においても非ヨーロッパ世界を含めた議論によって、いろいろな知見が刷新されても、社会科学にそれに波及するには時間がかかる。ただ、社会科学の分野まで波及しないと、真の学術変革とはなり得ない。シリーズの当該巻が広い分野に学問的インパクトを持つためには、隣接分野の研究者との対話が不可欠である。 海外調査がようやく可能となったので、これまでできなかった現地での文献調査によってに研究の材料をさらに補強する。また、海外の研究者の招聘も可能となったので、日本には少ない分野の研究者を招聘して、議論の深化を図る。
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