研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
20H05848
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
中野 祐司 立教大学, 理学部, 准教授 (20586036)
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研究分担者 |
椎名 陽子 立教大学, 理学部, 助教 (70845221)
飯田 進平 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20806963)
田沼 肇 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30244411)
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 教授 (90311993)
木村 直樹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80846238)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | アストロケミストリー / イオン分子反応 / 星間分子 / 合流ビーム / イオントラップ / イオン移動度 |
研究実績の概要 |
本研究では惑星系形成領域での複雑な化学組成分布の意味を化学過程に基づいて理解することを目指し,気相反応過程において重要な役割を果たしているイオン-分子反応・イオン-中性粒子反応に関する新たな実験研究の展開を目的としている。研究初年度となる2020年度は交付内定が11月下旬であったことから,立教大学,上智大学,東京都立大学において新たに開発する実験装置に必要な機器の仕様検討と詳細設計を中心に行った。3月までに実験装置の納入が完了してテスト実験を行う予定であったが,新型コロナウイルス感染症による影響で(特注の実験装置製作のための資材入手難)大幅な納期遅延となり,当初計画を12ヶ月延長した。 立教大学では合流ビーム実験に必要となる中性原子ビームを高効率で生成するため,新たに水冷式金属ミラーを用いた光中性化キャビティを開発した。光線追跡シミュレーションによるキャビティ光学系の最適化を行い,ビーム中性化装置を製作した。 上智大学では低温イオン-極性分子反応を測定するために必要となるシュタルク分子速度フィルターの設計と冷却8重極線形イオントラップの設計を行った。また,標的イオン生成に必要となるRFストレージイオン源とイオンビーム輸送系の設計及び数値シミュレーションによる輸送パラメータの確認を行った。 東京都立大学では,希薄な水素気体を満たした移動管を冷却する装置を開発するため,ヘリウム気体を用いた装置開発の経験に基づき,大きな温度差によって生じる圧力差を補正する方法について検討し,新たな装置開発のための設計を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症による影響で特注の実験装置製作のための資材入手が困難となったが,研究計画を12ヶ月延長したことでおおむね当初計画の目的は達成できている。一部入手できていない物品や仕様変更せざるを得ない機器があるものの,軽微な遅れについては次年度以降に順次対応できるため,研究計画全体としては問題なく遂行可能である。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり2020年度,2021年度に開発した実験装置のテストと最適化に取り組み,イオン-分子反応・イオン-中性粒子反応に関する速度定数の測定に向けた研究開発を推進する。 立教大学ではH3+やCO+などの分子イオンビームをC, H, Oのような中性原子ビームを合流衝突させて組み替え反応を観測することを目指し,その断面積や分岐比の絶対値測定に向けた検出器および測定システムの整備に力を入れる。 上智大学では,冷却8重極線形イオントラップを用いた新たな低温イオン-極性分子反応測定装置の開発を進める。特にコンピュータを用いた計測系の構築,RFストレージイオン源によって生成された低エネルギーイオンビームのイオントラップへの捕獲のためのイオンビーム輸送パラメータの最適化を行っていく。一方,既存の装置を用いた実験では,フルオロメタンに加えて,アンモニア,メタノール,エタノール及びそれらの同位体分子種による低温イオン極性分子反応の系統的測定を行っていく。 都立大学では,温度可変型低温イオン移動管を用いたイオン分子反応速度測定装置の開発を進める。特に,第1の移動管内において水素気体との反応によって生成したイオン種を,ヘリウム気体を満たした第2の移動管に導いて移動速度から構造異性体を分離できる機能を持った新しい装置を目指す。
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