研究領域 | ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05858
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
西田 昌平 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (20370075)
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研究分担者 |
原 康二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (90432236)
角野 秀一 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70376698)
Czank Thomas 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (00842957)
LAI Yun・Tsung 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (50873379)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | ダークマター / 加速器 / コライダー / トリガー / アクシオン / B中間子 / 電子 |
研究実績の概要 |
本研究では、電子陽電子衝突型加速器SuperKEKBのBelle II 実験のデータを用いてダークマターの探索を行う。Belle II では、一般的にB中間子などのハドロンが生成されるイベントに興味があるが、ダークマター探索ではLow Multiplicityイベント(衝突で出てくる粒子が少ないイベント)を解析の対象とする。これらのイベントは、現時点ではデータ取集の対象内であるが、加速器の性能が向上し、データ収集性能が逼迫するようになると、データ収集できなくなる恐れがある。そのため、ダークマター探索に用いるイベントに対するトリガー効率を維持しつつ、ビームバックグラウンドなどへのトリガーを抑制するように、トリガーの改良を行っている。そのため、アルゴリズムの改良の研究を行うとともに、Belle II で用いられている汎用トリガーボードUT4へのトリガーロジックの実装をすすめた。UT4は従来使われていたUT3ボードにかわるもので、より複雑なアルゴリズムを実装可能にする。これらの研究と一体であるが、終状態に光子だけが存在するモードの探索を可能にする単光子トリガーの性能評価と改良をすすめている。 ダークマター探索の物理解析としては、電子陽電子衝突反応で光子を伴ってダークマターが生成される過程の研究を進めた他、今後、探索を行う有望なモードを検討した。一つは、以前から行っているBelleのデータを用いてダークゲージボゾンZ'がミューオン対に崩壊する探索の実データの解析を進めた。また、B中間子が重いQCDアクシオンへの崩壊を探索する解析を開始し、Belle IIシミュレーションを用いて解析手法を計算した。これについては、200 /fb程度のデータがあれば有意義な結果が得られることがわかり、今後もこの解析に継続して取り組むこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の状況悪化のため、予定していた打ち合わせなどを実施できず、また、国内移動の制限などからトリガー開発やデータ解析にも遅延が生じている。トリガーについては、SuperKEKBのルミノシティの向上が予定よりも遅れており、トリガー開発の遅れがダークマター探索に直接影響を与える状況にはなっていない。データ解析については、オンラインでの打ち合わせなどを活用することにより、当初よりは遅れてはいるものの、研究は着実に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
トリガーの研究については、汎用トリガーボードUT4へのトリガーロジックの実装をすすめるとともに、より高いバックグラウンドに耐性のあるロジックの開発、および、トリガー性能の評価をすすめていく。データ解析については、Belle IIでのダークマター探索全体に協力するとともに、特に集中して探索を行う Belle IIの崩壊モードについては、シミュレーション研究にて解析手法を確立する。BelleにおけるダークゲージボゾンZ’の研究では、最終結果をまとめて、国際会議への発表や論文への投稿をすすめる。
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