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2020 年度 実績報告書

量子重力理論から迫るダークマター

計画研究

研究領域ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究
研究課題/領域番号 20H05860
研究機関東京大学

研究代表者

山崎 雅人  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (00726599)

研究分担者 白井 智  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (10784499)
野村 泰紀  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 主任研究員 (40647616)
齊藤 遼  山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70781392)
研究期間 (年度) 2020-11-19 – 2025-03-31
キーワードダークマター / 超弦理論 / 量子重力
研究実績の概要

ダークマターの正体が何であるかは現代物理学における最大の謎の一つである.しかしその一方でダークマターの性質についてはほとんどわかっていない.例えば,ダークマターの証拠はこれまでのところ重力を通じた相互作用のみにより求まっており,ダークマターの正体が何であるかについては知られていないことも多い.従ってダークマターの可能性については広大なパラメーター領域が存在しており,より効率的な探索のためにはその可能性を狭めることが重要である一方で,これまで調べられてこなかったようなパラメーター領域において新しいダークマターの可能性を追究することも重要である.
学術変革の本研究班では以上の問題について,量子重力や超弦理論の手法を中心に,素粒子現象論,宇宙論などの知見を交えて学際的に挑戦しようとするものである.
令和2年度の成果の一例として,白井と山崎による沼地予想についての研究がある(classical and quantum gravityに年度内に掲載).量子重力における沼地予想の一つとして弱い重力予想が存在するが,これはゲージ相互作用の強さに制限を与えるものである.これをスカラー場に拡張したのがスカラー版の弱い重力予想であり,筆者らは物理的な・実際的な動機に基づいて新しい予想を提唱し,その宇宙論的帰結(例えば軽いダークマターについての制限)を論じた.
別の一例として,斎藤は本学術変革にも参加しているChul-Moon Yoo氏などとの共同研究において,スカラ=テンソル修正重力理論に現れるカメレオン機構について研究し,定常解からの線形・非線形摂動の効果のダイナミクスを調べた.
このように,既に研究班内,また別の研究班との共同研究についても成果があがっている.一方で,実際には本年度の研究の成果は未発表のものが多く,来年度以降の更なる成果が期待できる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナの感染拡大による計画変更のため,研究費を繰り越すなどの計画変更が一部あった.しかし令和2年分はその研究費のほとんどを数値計算のための高性能計算機の購入にあてる計画となっており,計算機の購入は予定通り実行し東京大学,山口大学に設置済みであり,計算も順調に進展している.また,コロナウイルスによる影響の可能性は計画作成時にある程度織り込み済みであり,実際にはこれまでのところ大きな影響は受けていない.
研究班内での共同研究についても鋭意進めており,斎藤,白井,野村,山崎の四者でオンラインで随時ミィーティングを行うなどし,まだ出版にはいたっていないもの複数の共同研究が進行中である.また,本学術変革の他班との連携についても共同研究が既に行われているほか,新しい共同研究も進行中である.未発表の内容が多いためその研究の詳細をここに記すことはできないが,来年度以降にさらに成果を報告できると期待できる.今までのところ予想外の全く新しい発展は生まれているとまではいえないが,おおむね順調に進展していると評価することができる.

今後の研究の推進方策

本年度同様随時オンラインミーティングによるメンバーの議論と共同研究を加速する.その一方,次年度以降では対面での議論が可能になってくると期待されるので,対面での議論も取り入れ,インフォーマルな意見交換を行うことで研究を加速したい.より具体的には,まず国内の人的移動が可能になってくると期待されるので,例えば白井・山崎が山口大学の斎藤の元を訪問する,あるいは斎藤が東京大学を訪問するなどする.また,野村も令和3年度は東京大学への訪問を計画している.これらの機会を用いて新しい研究トピックのためのブレーンストーミングを行うほか,細かい技術的詳細についても議論したい.
また,令和3年度には博士研究員の雇用も計画している.既存のメンバーとは異なる専門的知識を持った新しいメンバーを加えることで,研究の幅をさらに広げ,メンバー間のシナジーを引き起こすことができると期待できる.

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] UC Berkeley(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      UC Berkeley
  • [雑誌論文] Dynamical Analysis of Screening in Scalar-Tensor Theory2021

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Nakamura, Taishi Ikeda, Ryo Saito, Norihiro Tanahashi, Chul-Moon Yoo
    • 雑誌名

      Phys.Rev.D

      巻: 103 ページ: 024009

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.103.024009

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Probing dark matter self-interaction with ultrafaint dwarf galaxies2021

    • 著者名/発表者名
      Kohei Hayashi, Masahiro Ibe, Shin Kobayashi, Yuhei Nakayama, Satoshi Shirai
    • 雑誌名

      Phys.Rev.D

      巻: 103 ページ: 023017

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.103.023017

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Non-perturbative Effects on Electroweakly Interacting Massive Particles at Hadron Collider2021

    • 著者名/発表者名
      Taisuke Katayose, Shigeki Matsumoto, Satoshi Shirai
    • 雑誌名

      Phys.Rev.D

      巻: 103 ページ: 095017

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.103.095017

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] On Stability of Fermionic Superconducting Current in Cosmic String2021

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Ibe, Shin Kobayashi, Yuhei Nakayama, Satoshi Shirai
    • 雑誌名

      JHEP

      巻: 2021 ページ: 217

    • DOI

      10.1007/JHEP05(2021)217

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Is Gravity the Weakest Force?2021

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Shirai, Masahito Yamazaki
    • 雑誌名

      Class. Quantum. Grav.

      巻: 38 ページ: 035006

    • DOI

      10.1088/1361-6382/abc524

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Black Hole Interior in Unitary Gauge Construction2021

    • 著者名/発表者名
      Yasunori Nomura
    • 雑誌名

      Phys. Rev. D

      巻: 103 ページ: 066011

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.103.066011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] From the Black Hole Conundrum to the Structure of Quantum Gravity2021

    • 著者名/発表者名
      Yasunori Nomura
    • 雑誌名

      Mod.Phys.Lett.A

      巻: 36 ページ: 2130007

    • DOI

      10.1142/S021773232130007X

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cosmological Constraint on Vector Mediator of Neutrino-Electron Interaction in light of XENON1T Excess2020

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Ibe, Shin Kobayashi, Yuhei Nakayama, Satoshi Shirai
    • 雑誌名

      JHEP

      巻: 2020 ページ: 004

    • DOI

      10.1007/JHEP12(2020)004

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ensemble from Coarse Graining: Reconstructing the Interior of an Evaporating Black Hole2020

    • 著者名/発表者名
      Kevin Langhoff, Yasunori Nomura
    • 雑誌名

      Phys. Rev. D

      巻: 102 ページ: 086021

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.102.086021

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] C01: Ultimate Theory2021

    • 著者名/発表者名
      Masahito Yamazaki
    • 学会等名
      Dark Matter Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] From the Black Hole Conundrum to the Structure of Quantum Gravity2021

    • 著者名/発表者名
      Yasunori Nomura
    • 学会等名
      Recent Progress in Theoretical Physics based on Quantum Information Theory
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Swampland and Cosmology2020

    • 著者名/発表者名
      Masahito Yamazaki
    • 学会等名
      Swampland and Cosmology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] Masahito Yamazaki, a physicist/mathematician

    • URL

      https://member.ipmu.jp/masahito.yamazaki/

  • [備考] Masahito Yamazaki 【 山崎雅人(物理学者・数学者)】

    • URL

      https://www.youtube.com/channel/UCz7Jg2ZzDxYwcBU4tDakAlg

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公開日: 2022-12-28  

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