研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
20H05868
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 建児 京都大学, 工学研究科, 教授 (80262145)
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研究分担者 |
福島 孝典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70281970)
渡邉 峻一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40716718)
竹内 正之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70264083)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 有機機能材料 / 自己組織化 / 2次元表面・界面 / 電子物性 / 物理量変換 |
研究実績の概要 |
π共役ラジカルを側鎖としてもつ分子ワイヤともたないワイヤの分子コンダクタンスを比較することにより、分子ワイヤの開殻性がコンダクタンスに与える影響について調査した。具体的には、4-(biphenyl-4-yl)pyridineワイヤにイミノニトロキシドとメチル基を持つ分子をC30H61とC22H45の側鎖をもつポルフィリンテンプレートにそれぞれ配位させた分子C30-Rh-INとC22-Rh-Meを合成し、オクタン酸/HOPGの固液界面で定電流モードSTM測定を行った。相分離したSTM像の格子定数より、異なる長さの側鎖をもつポルフィリンテンプレートそれぞれのドメインの分子を特定し、測定高さのヒストグラムを作製し、分子コンダクタンスの評価を行った。その結果、イミノニトロキシド置換のワイヤはメチル置換のワイヤに比べて3.2±1.7倍のコンダクタンスを持つことが分かった。DFT計算により、ラジカル置換のワイヤのSOMOは高々17%しかワイヤ部分に存在しないが、その効果は大きいことが分かった。 トリフェニレンヘキサカルボン酸エステルにセミフルオロアルキル基を側鎖として導入すると、大面積ホメオトロピック配向したカラムナー液晶を形成する。この液晶は、力学刺激の印加により配向変化し、カラム状集合体が完全に基板に対して水平配向し、その状態がメモリされることを見出した。このような配向変化と配向状態のスイッチング・メモリは通常の円盤状分子をメソゲンとするカラムナー液晶には見られない特異な挙動である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子コンダクタンスにおける開殻性の効果を2次元相分離した固液界面での分子配列のSTM測定により検討し、イミノニトロキシド置換のワイヤはメチル置換のワイヤに比べて高い分子コンダクタンスを持つことが分かった。 セミフルオロアルキル基をもつトリフェニレンヘキサカルボン酸エステルが形成するホメオトロピック配向したカラムナー液晶は、力学刺激の印加により配向変化し、その状態がメモリされることを見出した。 以上の結果が得られており、本研究課題は目的の達成に対して概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ワイヤ上の小さなスピン密度がコンダクタンスに大きな影響を与えていることが示唆されるので、開殻系分子の分子コンダクタンスと分子ワイヤ上のスピン密度の関係を多方面から明らかにする。また、メソゲンに結合したエステル基とセミフルオロアルキル基の協同効果の影響を調べるために、異なるエステル置換π電子系メソゲンに類似の設計を適用し、得られる液晶の配向変化・メモリ機能の一般性を探ることを目指す。
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