研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
20H05869
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 顕一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00634982)
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研究分担者 |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40525573)
水上 雄太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (80734095)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 高密度共役 / 電荷ガラス / 非線形伝導 / 幾何学的フラストレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、「空隙をデザインし、空間を電子で埋める」という概念に基づき、分子構造・配列と電子密度を制御することで、電子の局在性と遍歴性を自在制御し、未踏電子機能を提唱・実現することである。そのために当該年度は、幾何学的フラストレーションを内包した高密度共役物質として、非線形伝導を示す電荷ガラス物質である2次元三角格子BEDT-TTF分子錯体に着目した研究を行い、電荷ガラス形成に構造ガラス形成も重要な役割を担っていることを明らかにした。本結果は、電荷ガラス形成物質が示す非線形伝導の起源を解明するうえで、重要な知見を与えるものと考えられる。 また、当該年度は、高密度分子集合体の創製に向けたビルディングブロックとして、π共役系の炭素-炭素結合を等電子的かつ分極したホウ素-窒素結合で置き換えたBN置換π共役分子を合成し、室温・溶液状態での特異な長寿命発光特性を見いだすとともに、有機EL素子のコンポーネントとして有用であることを明らかにした。また、水にも安定なテトラアリールジボラン誘導体を合成し、この化合物が青-オレンジの二重蛍光を示すこと、および溶液中の粘度や固体状態での運動性を反映して二重蛍光の相対強度が変化することを見いだした。さらに、含ホウ素π共役マクロサイクルを合成し、分子構造と反応性の検討を通じて、ファンデルワールス力を超える強いボラン-オレフィン相互作用が働くことを実験的に初めて実証した。これらの成果は、典型元素の性質を活かした高密度分子集合体を創製するための重要な土台と位置付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電荷ガラス形成機構の理解や典型元素の性質を活かした高密度分子集合体を創製するための重要な土台を構築するに至っているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、幾何学的フラストレーションを内包した高密度共役物質として,2次元の金属有機構造体(MOF)や共有結合性有機構造体(COF)の新構造および物性開拓に取り組む。特に、空隙が電子で埋められた高密度MOFおよびCOFを対象に、外場摂動も相乗的に利用することで、遍歴性を持った電子と局在性を持った電子の自在制御を試みる。
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