計画研究
(谷口G)巨大分極応答性超秩序構造の創出に向けてNbなどの元素置換を施したTiO2のセラミックスおよび単結晶試料の合成、誘電測定、放射光Ⅹ線回折、蛍光Ⅹ線ホログラフィを実施した。その結果、試料の絶縁性を向上する新たなプロセスを見出すとともに、Nb置換率の増加に伴う欠陥構造の質的な変化を見出した。また、Zn置換BaAl2O4およびCa8[(Al1-xGax)O2]12{WO4}2において、それぞれ光機能性超秩序構造及び圧電機能性超秩序構造に関する新たな知見を得た。(久保園G)圧力下での超伝導物質の興味深い超伝導特性の研究を進めるとともに、X線蛍光ホログラフィ(XFH)によるトポロジカル絶縁体の原子配列の乱れとトポロジカル量子特性の相関に関する研究などを実施した。それによって、BaTi2(Sb1-yBiy)2Oにおいて、圧力印加による格子崩壊転移に起因する超伝導転移温度の急激な上昇を発見した。(中島G)YNbO4表面に形成されたルイス酸塩基サイトの精密制御、窒素ドープカーボンによってコーティングされた金属コバルトナノ粒子の酸化触媒作用、リン化コバルトナノ構造体の還元触媒作用などを利用して多様なバイオマス変換反応を構築した。(武田G)新奇誘電体CaTi(Si,Ge)O5(CTSG)、超残光体Dy置換オケルマナイト結晶(Dy-Ak)、全固体Liイオン電池負極候補材TiNb2O7(TN)のバルク結晶育成をおこなった。CTSGに関しては最大サイズ1 cm以上、Dy-Akに関しては直径1インチ以上の結晶を得た。TNに関しては厚さ3mmを超す結晶が得るとともにLi 挿入に成功した。(田中G)植物型フェレドキシンにおけるX線結晶構造解析による超高分解能構造決定、中性子結晶構造解析による水素原子座標の決定、蛍光X線ホログラフィによる金属原子の価数決定に取り組んだ。
2: おおむね順調に進展している
(谷口G)巨大分極応答性超秩序構造に関しては、Nb置換TiO2における系統的な物質合成と誘電測定、局所構造解析、さらに第一原理計算を駆使した総合的研究により、Nb置換によって生じる局所構造と誘電率増強の起源を明らかにしつつある。また、光機能性超秩序構造創出に関しては、光誘電効果の過渡的応答の精密測定および第一原理計算によってZn置換BaAl2O4における局所構造と光誘電効果に関する理解が大きく進展した。さらにアルミネートソーダライト型化合物において圧電機能性超秩序構造の学理を切り拓きつつある。(久保園G)超秩序構造を有する物質系の圧力下での超伝導特性に関する研究を行って、興味深い超伝導特性を明らかにしてきた。また、蛍光X線ホログラフィや光電子ホログラフィなどの研究手法を活用して、超伝導や強磁性といった興味深い物性を示す物質群局所構造が、物性の発現に如何なる影響を及ぼすかを明らかにした。(中島G)既存プロセスの概念に基づく反応条件最適化によって生産性向上を目指す研究活動が多い中、新しいコンセプトで触媒反応をデザインすべく基質の反応性制御を取り入れた触媒プロセスの設計を進めている。様々な固体材料の超秩序構造に基づく触媒作用を利用しつつ、バイオマスプラスチックの原料となるフラン系のカルボン酸、アミン、カルボン酸エステルなどを高濃度溶液から高効率で合成できるようになりつつある。(武田G)種々の超秩序構造物質について、領域内の共同研究として物性測定と構造解析に必要最小限サイズの試料を提供することができており、おおむね順調に進展している。(田中G)すでにX線結晶構造解析により酸化型Fdおよび還元型Fdの構造を0.78Å分解能で構造決定することに成功している。Fdの電子伝達パートナーであるFNRについてもX線および中性子結晶構造解析により精密な原子座標の決定が得られている。
(谷口G)巨大分極応答性超秩序構造に関しては、現在の取り組みを継続して進めるとともに、核磁気共鳴吸収などの局所プローブ技術を相補的に組み合わせる。光機能性超秩序構造に関しては、現在の実験的および理論的アプローチを継続するとともに、より優れた光誘電効果を示す物質系を探索する。圧電機能性超秩序構造に関しては、これまでに得られた知見に基づいて、特異的圧電特性を有する新規組成の探索に取り組む。(久保園G)超秩序構造に基づく新規高温超伝導物質の創出に向けて、高温加熱法・溶液法・高圧合成法を用いて、結晶面間がvan der Waals力によって弱く結びついている物質系に「金属原子との錯形成体」を導入する。得られた物質群の局所構造解析をXFHやPFHによって行うとともに、超伝導物性との相関を詳細に調べる。(中島G)リン化コバルトナノ構造体の還元触媒作用に着目し、バイオマスポリアミドの原料となる5-網ノメチルフラン-2-カルボン酸や2,5-ジアミノメチルフランの合成を検討する。そのために、リン化コバルト触媒の優れた触媒作用に依存するだけではなく,ホルミル基の副反応制御のためアセタールを活用する。(武田G)CTSGとTN の大型化に取り組む。これには優先成長方位の決定と育成雰囲気の最適化が必要である。前者には、CTSGにはGeを含まないCTS単結晶、TNにはルチル単結晶を用いることで対応する。後者には、高圧雰囲気下単結晶引上装置を用いて酸素分圧を制御することで対応する。(田中G)XFH実験で得られたデータから、Fdの[2Fe-2S]金属クラスター周辺の像再生を目指す。解析の精度向上に向けて、現状でデータが不足している領域のデータ収集を進めると共に二次元検出器に混入するBraggピークを除去するプログラムを開発する。
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