研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05880
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
脇原 徹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70377109)
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研究分担者 |
増野 敦信 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (00378879)
北村 尚斗 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 准教授 (10453812)
小野 円佳 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20865224)
伊與木 健太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (50782174)
若林 整 東京工業大学, 工学院, 教授 (80700153)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 超秩序構造 / ゼオライト / 蓄電材料 / ガラス / 半導体 |
研究実績の概要 |
「超秩序構造」を理解することにより、ナノスケールで高度に構造を制御し、新規高機能性材料の創出が期待される。現在、構造・物性・機能の制御が完全に達成できていない材料群として、ゼオライト、蓄電池材料、ガラス、半導体材料に着目し、超秩序材料の設計による高機能材料の開発とその社会実装へ向けたスケールアップ検討を目的としている。 固体と液体が存在する系で合成されるゼオライトにおいて、多くは固液を分離したうえで固体成分の構造変化等をex situ条件で分析してきた。合成条件下での結晶化の挙動をin situ測定することにより、ex situ測定だけでは得られなかった情報を得ることができると考えられる。触媒などとして用いられるCHA型ゼオライトを対象とし、in situ HEXTS測定を行った。合成装置の改良によってゼオライトのin situ測定の適用範囲を広げ、実際に初めて合成途中にリング構造が変化する様の観察に成功した。特にアルミノシリケート非晶質の重縮合に伴う4員環の増加がCHAゼオライトの核発生前に進行していることを明らかにした。リチウムイオン電池の負極材料として、超高速充放電が可能なTi-Nb-O系材料に着目し、TiNb2O7にInを置換した試料とTi:Nb比が異なる試料を合成して充放電試験を行った。その結果、In置換により放電容量が増加することが明らかになった。希土類シリケート二元系ガラスの合成に成功し、機械特性評価や構造解析を行った。また、リン酸塩ガラスに微量添加したクロムが、化学的耐久性を劇的に向上させること、またそれが強い組成依存性を示すことを見出した。HIPを用いて1800℃、高圧下処理した高純度シリカガラスを得た。これらのガラスのレイリー散乱光係数を測定したところ、0.2 GPaの結果は既報データと整合性が良く、圧力が高いほど散乱が小さくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
材料における新機能は多くの場合、ランダムに分布している不純物の存在や原子配列の不均質性によって実現している。しかしながら微量のドーパントや空隙構造などの理解は十分ではない。現在、構造・物性・機能の制御が完全に達成できていない材料群として、ゼオライト、蓄電池材料、ガラス、半導体材料に着目し、超秩序材料の設計による高機能材料の開発とその社会実装へ向けたスケールアップ検討を目的としている。本研究により得られている成果は超秩序構造を有する材料の実用化へ向けて不可欠なものである。さらに、ゼオライトの結晶化メカニズムに関してこれまでに不可能であったリング構造変化を検出できた点、ガラスの劇的な性能向上、不規則岩塩型正極材料について、超秩序構造ライブラリーの構築などが進んでいる。また、他班との共同研究も順調に進捗しており、当初の計画を大きく上回る成果が出ていると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
以上の成果は、超秩序構造を有する材料の実用化へ向けて不可欠なものである。2021年度の研究成果を基盤にし、理論班および手法班と連携することにより、より発展させ超秩序構造のライブラリーを作成し、それに基づく超秩序構造に基づいた材料設計、デバイス試作を進める予定である。
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