研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05882
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 毅彦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (00371138)
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研究分担者 |
橋本 由介 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60872877)
横谷 尚睦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (90311646)
正井 博和 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10451543)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 光電子ホログラフィー / 高温融体 / 非晶質材料 / 機能性材料 |
研究実績の概要 |
本研究は、機能性材料に存在する「超秩序構造」を対象として、マクロスケールの精密な物性測定及びX線光電子ホログラフィーを利用したミクロな測定(原子配列計測と電子構造の同時計測)を行い、マクロ/ミクロの両面からの計測を通じて構造と機能性発現機構の関係を明らかにするものである。 微小重力環境を用いたマクロスケール物性計測においては、国際宇宙ステーションに搭載した静電浮遊炉を用いて超高温酸化物融体の実験を進めている。昨年度測定を進めたLa2O3-Nb2O5系について更に組成を変更して熱物性計測(密度、表面張力及び粘性係数)を実施した。また、量子ビームと地上の装置群を用いて非晶質材料における超秩序構造の探索を進めている。今年度は放電プラズマ焼結法によって作製したSiO2ガラス、Ag添加リン酸塩ガラス、ゼオライトを出発原料とする非晶質SiO2を対象として研究を進めた。 局所電子状態の計測においては、SPring-8のBL25SUに設置した軟X線光電子ホログラフィー装置を利用して研究を進めている。阻止電場型分析器(RFA)のマニピュレータに冷凍機を付加し、エキゾチック超伝導体候補物質であるLa(O,F)BiS2、常温で金属絶縁体転移を示すW-doped VO2について温度を変化させた光電子ホログラフィー計測を実施しこれらの物質の局所構造の解析を進めた。更にNドープダイヤモンドについては、測定の問題となる帯電について回避策の構築を進めている。 より広範囲な試料について光電子ホログラム計測が可能となる硬X線対応の光電子ホログラフィー分光装置の開発を進めており、今年度は装置の組み立て及び試験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小重力環境での酸化物融体の熱物性計測に関しては、制御ソフトウェアの更なる回収やその運用方法の習熟等から試料の溶融成功確率が飛躍的に増大(50%から70%)し、目標としていた酸化物融体の熱物性計測に成功している。非晶質材料における超秩序構造の探索においては、量子ビームによるXANES計測やXAFS計測結果とマイクロRamann分光やマイクロIRスペクトルの測定結果を総合して、構造解析を進めている。 軟X線ホログラフィー分光装置を用いた研究では多くの機能性材料について局所構造研究が進められるとともに、冷凍機の付加など更なる装置改良を進めている。硬X線光電子ホログラフィー分光器の開発は、最終年度(2024年度)のSPring-8への設置に向けて、着実に組み立て及び試験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
微小重力環境での高温酸化物融体熱物性計測に関しては、継続して計測を進めて行く。ガラス化しやすい材料/しにくい材料が融体においてどのようなバルク物性及びミクロ構造も持つか、量子ビームの実験データと合わせて解析を進めて行く。硬X線光電子ホログラフィー分光装置の開発は、次年度に組み立て及び単体の機能試験を終了して、2024年度にSPring-8に搬入する予定をキープする。既存の軟X線光電子ホログラフィー分光装置については継続して利用して、従来測定してきた機能性物質に加えて、測定対象を広げて研究を進める。
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