研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05884
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
志賀 元紀 東北大学, 未踏スケールデータアナリティクスセンター, 教授 (20437263)
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研究分担者 |
松下 智裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10373523)
大林 一平 岡山大学, AI・数理データサイエンスセンター, 教授 (30583455)
中島 健 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 助教 (60935401)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | マテリアルズ・インフォマティクス / 機械学習 / 原子像再生 / 位相的データ解析 |
研究実績の概要 |
手法班(計画班A02-1およびA02-2)や理論班(A03-1)との密な連携によって、データ解析法の開発、開発法のコード整備、ソフトウェアの機能強化を行い、開発ソフトウェアを用いたデータ解析に取り組んだ。計測データ解析の課題において、手法班から提供される超秩序構造を対象とする原子分解能ホログラフィー計測、また、電子線顕微鏡による計測のデータ解析法の開発に主に取り組んだ。前者の計測に対して、光電子ホログラフィーに対する解析法の開発を進め、特に、主成分分析によってバックグランド・化学成分の同定する手法、ホログラフィー測定から原子配列を推定するためのリバースモンテカルロ法の開発に取り組んだ。そして、これらの手法をPythonと解析プラットフォーム3D-AIR-IMAGEで連携できるように開発を進めた。電子線顕微鏡による計測データ解析の課題において、手法班(A02-1)によって計測されたシリカガラスの電子回折イメージング計測データ解析によって、構造秩序に関する新しい知見を得られた。 超秩序の記述法の課題では、化学結合リングに基づく解析法、また、パーシステントホモロジーに基づく解析法の課題に取り組んだ。リングに基づく解析において、シリカのアモルファスおよび結晶の構造秩序を網羅的に解析および比較して、学術雑誌論文にて発表した。また、パーシステントホモロジーを用いた解析の課題では、分担者の大林らが中心に開発しているソフトウェアHomCloudの機能強化および機械学習ポテンシャルへの応用などの新しい方向性を探索した。また、前年度から取り組んでいる連結パーシステントダイアグラムに関連する課題においては、区間近似の概念と計算アルゴリズムの提案、また、区間近似分解の可視化手法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計測班A02-1、A02-2、公募班との共同研究で計測したデータの解析を、本計画班で開発したソフトウェアを用いて行った。原子分解能ホログラフィーの解析は、分担者の松下が開発している解析プラットフォーム3D-AIR-IMAGEを用いて行われた。さらに、今年度に開発した手法や、Pythonと連携して動作するように設計するなどソフトウェアの改良を重ね、さらに利用しやすいものとなった。また、回折実験などの計測データやシミュレーションによって得られた構造モデルデータの解析のために、可視化や構造秩序解析のためのソフトウェアSOVA (Structural Order Visualization and Analysis tools)を開発し、領域内で共有した。SOVAによって、化学結合リングなどの構造秩序解析を容易に実行できるようになった。 構造秩序の記述に関する研究において、ネットワーク形成物質の構造秩序解析のために、化学結合リングの形状の評価法、および、リング周辺の原子との相関解析法を開発した。これらの手法をシリカのアモルファスおよび結晶の構造秩序解析に応用し、アモルファスと結晶の類似性、また、中距離構造秩序に関する新しい知見を得られた。パーシステントホモロジー(PH)に関する研究においては、PHを用いて原子配置から機械学習ポテンシャルを構築する手法を開発し、その優位性を検証した。また、前年度から取り組んでいる連結パーシステントダイアグラムに関連する研究においては、区間近似の概念と計算アルゴリズムの提案、また、区間近似分解の可視化手法を提案した。さらに、これらの新規の開発法を用いて、他の計画班との共同研究を推進し、ガラス材料や電池材料などの構造秩序解析に取り組み、新しい知見を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析法の開発、開発法のコード整備、ソフトウェアの機能強化を行い、他の計画班や公募班と共同研究をするための基盤を整備する。計測データ解析の課題では、手法班(計画班A02-1およびA02-2)から提供される光電子または蛍光X線による原子分解能ホログラフィー計測、また、電子線回折図形計測のデータ解析法の開発に主に取り組む。原子分解能ホログラフィーのデータ解析では、バックグランド信号および原子配置の同定に関する機械学習法を開発し、他の計画班および公募班の実計測データ解析に応用する。電子回折図形のデータ解析の課題においては、実計測データおよび理論計算データを定量的に比較することによって局所的な構造秩序を解析する手法を開発する。 超秩序の記述法の課題では、パーシステントホモロジー解析ソフトウェアHomCloudの機能強化、連結パーシステントダイアグラムなどの新しい構造秩序解析法を引き続き開発する。また、リングや四面体に基づく構造秩序解析ソフトウェアSOVAの開発を継続し、論文発表および研究者のHPなどで公開する。そして、試料班が中心となって取り組んでいる超秩序ライブラリーに収録される構造モデル、様々な条件下で合成された酸化物ガラス、ゼオライト等の構造秩序解析に応用し、各構造の本質的な秩序を明らかにする課題に取り組む。材料探索に関する課題において、シミュレーションによって得られた大規模な構造モデルと物性との相関解析、最適な合成条件の探索に関する研究に取り組む。これまでに開発してきた記述子を取り入れ、物性の発現に寄与する構造秩序を検証し、材料設計の指針となる因子の同定を目指す。
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