研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05891
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
玉田 洋介 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (50579290)
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研究分担者 |
松田 厚志 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 主任研究員 (20585723)
坂本 丞 基礎生物学研究所, 生命熱動態研究室, 特任助教 (80804145)
平野 泰弘 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (10508641)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 生細胞・組織 / 散乱 / 揺らぎ / 蛍光イメージング / 透視 |
研究実績の概要 |
生きた植物(ヒメツリガネゴケ)における光の散乱・揺らぎの計測について、蛍光タンパク質からの蛍光の位相・振幅情報をより高精度に計測する手法の研究を的場と共同で進めた。生きた動物(野生型メダカ胚)についても、強度輸送方程式を用いて位相・振幅情報を計測し、光学特性の評価を開始した。また、早野計画研究メンバーである服部 雅之博士(国立天文台)、および三浦 則明博士(北見工業大学)との共同研究によって、点光源がなくても光の乱れを計測できる画像相関による波面計測法を、生物の3次元組織に高精度に適用する研究を進めた。さらに、画像相関による波面計測法を用いて生物の明視野像から光の乱れを計測する際に必要となる明瞭なコントラストを得るための適応的な光学系を構築した。また、蛍光顕微鏡の3次元画像から光学収差を測定する技術を使用して、超解像顕微鏡の画像を改善することに成功した。 遺伝子操作によって散乱・揺らぎの小さい生物を作出する研究について、生きた植物細胞では葉緑体が散乱・揺らぎの主な原因であることを明らかにしており、クロロフィルなど油性の色素による高屈折率が光を乱す原因であると考えられた。ヒメツリガネゴケを用いて葉緑体の配置が変化する変異株や葉緑体における油性色素の量が低下する変異株を作出した結果、実際に細胞の透明度の向上が観察された。このような現象が生物に共通なものか否かを確かめるため、分裂酵母において、細胞核膜の脂質膜が異常発達する変異体を作出した。 上記のほかに、的場と共同で第1回領域融合推進班ワークショップを神戸大学にて開催し、公募研究メンバー、領域若手メンバーを中心に、強度輸送方程式を用いて生きた植物細胞の位相・振幅情報を計測することで、領域内融合研究を推進した。そうした領域融合活動において、公募研究との新たな共同研究が開拓された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生きた細胞や組織における散乱・揺らぎの計測と、遺伝子操作によって散乱の少ない生物を作出する研究について、実際に透明度の高い生物の作出に成功するなど、順調な成果が得られている。さらに、領域融合推進班会議を的場領域代表と開催し、領域内融合研究を推進するとともに、本計画研究と公募研究との新たな共同研究が開拓されるなど、新しい展開が始まっている。これらのことから、現在までの進捗状況を「(2) おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
生きた植物(ヒメツリガネゴケ)、動物(ミナミメダカ)、繊毛をもつ微生物(テトラヒメナ)、繊毛を持たない微生物(分裂酵母)における光の散乱・揺らぎを計測する研究を継続するとともに、光の散乱・揺らぎを克服して生きた生物深部をイメージングする研究を行う。的場・粟辻・渡邉計画研究との共同研究のもと、ホログラフィーや強度輸送方程式による光の散乱・揺らぎの計測と、光伝搬の直接可視化のための実験を進める。また、公募研究との共同研究のもと、生きた生物における散乱・揺らぎを計測する新しい研究を行う。こうした光の散乱・揺らぎの情報をもとに、的場・早野計画研究との共同研究のもと、光の散乱・揺らぎを打ち消す光波の入射や高精度補償光学の研究を進める。また、生体による光の散乱を抑制するために用いられる2光子顕微鏡を利用して、画像から光の乱れを計測し、補正できる技術を開発する。さらに、2光子顕微鏡のシグナルノイズ比を向上させる方法の開発に取り組む。 上記に加えて、生きた動植物組織深部や微生物内部における散乱・揺らぎの解析のため、また透視の標的として、細胞核や染色質構造などを蛍光標識した植物、動物、微生物の作出を継続する。また、遺伝子操作によって散乱の小さい生物を作出する研究を継続する。葉緑体の配置が変化する変異株や葉緑体における油性色素の量が低下する変異株についてホログラフィーや強度輸送方程式などを駆使して光の散乱・揺らぎを計測し、光学特性の改善を詳細に解明する。また、デンプン合成経路阻害株などを含む散乱・揺らぎの小さい生物の作出を継続し、順次実験室環境下で正常に生育できるか確認する。ミナミメダカではノックアウトにより色素細胞をなくして、強度輸送方程式によって光学特性の変化を観察する。分裂酵母では、樹立した様々な株を用いて、細胞内での散乱を引き起こす生体物質を同定する。
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備考 |
1, 2021年9月15日,ワトソン株式会社/深江化成株式会社 若手研究者を応援するnote インタビュー記事 https://note.com/watson_japan/n/n8281628adab5 2, 玉田 洋介, 宇都宮大学学長表彰 優秀賞(研究)(2022年1月12日)
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