研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05892
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
高山 佳久 東海大学, 情報通信学部, 教授 (30358915)
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研究分担者 |
玉川 一郎 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (40273198)
小林 智尚 岐阜大学, 大学院工学研究科, 教授 (50205473)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 精密気象観測 / 数値気象モデル / 空間光通信 / 揺らぎ / 散乱透視学 |
研究実績の概要 |
(1) 精密気象観測による大気の光学特性の推定 前年度導入した大気乱流の気象学的計測を行う超音波風速温度計による観測を実施するのに加え、レーザー光を用いて長期間連続で大気の光学的ゆらぎを計測するシンチロメータを導入し、計測を開始した。これによって、大気の光学的ゆらぎとそれをもたらす気温等の乱流変動を計測できるようになった。 (2) 超高解像度数値気象モデルを用いた大気揺らぎの光学的影響の予測 従来の気象予報システムで用いられている1キロメートルから数キロメートルの解像度予報結果を、さらに高解像度に改造した気象モデルの初期条件・境界条件としてネスティング手法により予報計算を行った。今年度は水平解像度333mまでの高解像度計算を実施した。高解像度化により計算不可は急激に増加したが、昨年度導入した並列計算機を効率的に活用することにより、計算が可能となった。計算が高解像度化されたことにより、地表面付近での大気揺らぎに係る空気の運動、特に特定の揺らぎの原因となる空気塊の振る舞いが再現されるようになった。ただし、実際の状況を再現するにはさらなる高解像度を進める必要が確認された。 (3) 通信光の波面操作による照射の安定化 波面操作による照射の安定化では、精密気象観測および超高解像度数値気象モデルから得た空気の散乱・揺らぎのパワースペクトルを考慮し、同時照射する複数の通信光の波面を制御する。本年度は、空気の揺らぎの推定から伝搬によって通信光が伴う最大の空間周波数以下で通信光の波面を制御するソフトウェアを作成した。また、波面制御に用いる空間光変調器を用いた伝送用の光学系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 精密気象観測による大気の光学特性の推定 超音波風速温度計を用いて、屋外で計測を行い、大気乱流から光学的ゆらぎを評価した。また、 大気の光学的ゆらぎを計測するシンチロメータの導入について検討し導入を行い、試験観測を行った。 (2) 超高解像度数値気象モデルを用いた大気揺らぎの光学的影響の予測 昨年度構築した並列計算機などの計算資源を効率的に活用し,従来の気象モデルより高解像度の予報計算を実施した.この高解像度化により,予報結果では地上付近での大気揺らぎに係る微細な空気塊の振る舞いが再現されるようになった.これらの活動により予定通りの進捗を得た. (3) 通信光の波面操作による照射の安定化 揺らぎ場を通過した光の振幅分布を計算するプログラムを完成させ、気象計測と演算から推定した大気の特性と伝搬光とを結びつけるシミュレーションを可能とした。また昨年度に調達した機材を用いて光計測系を構築し、約500mの距離を伝搬させた光の計測実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 精密気象観測による大気の光学特性の推定 超音波風速温度計とシンチロメータを安定して野外観測を行えるよう、設置方法や電源など細部の検討を進め、長期計測と場所を変えての集中観測に備える。また、気象モデルの直接の計算対象である上空の風速分布を計測するシステムの導入を図る。 (2) 超高解像度数値気象モデルを用いた大気揺らぎの光学的影響の予測 今年度の活動により,高解像度の大気の振る舞いが再現された.しかし大気の光学的揺らぎを予測するには,揺らぎの原因となる大気乱流の再現性を高め,より高解像度の計算が必要となることがわかった.そこで今後は大気乱流の再現性を高めるように気象モデルの改良を行うとと共に,さらなる高解像度化を試みる. (3) 通信光の波面操作による照射の安定化 飛行場を借用して、約1kmを伝搬した光の計測を行う予定である。揺らぎ場を通過した光の照射領域における光強度が、マルチビーム伝送によって安定する効果をシミュレーションと実験の両面で確認する。また、強度変調して同時に射出する複数の信号光から、受信側でデータが抽出できることを確認する。なお互いの研究進捗状況の交換や問題点の議論などは、今後の状況を注視しながらオンライン会議等を活用して研究を推進する。
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