計画研究
2020年度に実施したことは以下のとおりです。空間光変調を与えた時間変動スペックルの測定誤差・補正性能の数値シミュレーションを開始し、新たに発案したアルゴリズムである、撮像面におけるスペックルの電場に対して、変調なし、次にそれぞれ直交する電場ベクトルを正負の2つの変調を順に与えた5つの状態を1セットとして、これを繰り返す。それぞれの状態の時の撮像面の強度を時間平均し、5つの平均測定量の演算からスペックル強度を求め、推定したスペックルを補正する。数値シミュレーションでは、補償光学補正後の光波の残差、大気揺らぎの時間スケール、変調量、スペックルの光強度、平均する時間などをパラメータにし、フォトンノイズ、検出器の読み出しノイズなどの誤差要因も加味し、パラメータの依存性が把握できてきている。その結果を論文にまとめ始め、ドラフトが完成した。次に数値シミュレーションの結果を踏まえて、実験室実証及びすばる望遠鏡での実証観測に必要な位相変調素子(可変型鏡)、撮像系(高速カメラ)、制御系(FPGA)などについて仕様作成を進めた。制御系に用いるFPGAを入手し、初期的な試験を実施した。高速カメラはコロナ禍による部品調達の遅れで次年度に入手するため予算を繰り越した。可変型鏡は次年度の購入に向けた仕様書を作成し、可能性のある製作業者のリサーチを行なった。また、補助的なコンポーネントとして、補償光学補正後のわずかな光波誤差をシミュレートする安定化レーザー光源、光波誤差を発生させるための位相変調素子などの仕様を検討した。一方、領域で連携する他の計画研究のチームとの共同研究について議論を進めた。
2: おおむね順調に進展している
1. 空間光変調を与えた時間変動スペックルの測定誤差・補正性能の数値シミュレーションの結果の論文化については、ドラフトが完成し、計画研究メンバー及び研究協力者で推敲を行っている。2. コロナ禍による物品調達の遅延による高速カメラ予算の繰越など多少の影響を受けた。一方、国立天文台先端技術センターに実験スペースを申請し、確保することができた。3. 領域融合推進班メンバーや共同研究者とのface-to-faceの会合が制限されたため、なかなか議論を深めることができなかったため、新しい共同研究の進捗は 捗々しくなかった。今後のコロナ禍の状況の改善に期待したい。
空間光変調を与えた時間変動スペックルを用いた主星のスペックル誤差推定とその補正の数値シミュレーションをさらに進めて、論文を投稿する。また、その原理を実証する実験系の設計に予定通り取り掛かる。実験系の主要要素となる可変型鏡、高速カメラ、FPGA制御系に加えて、光源、レンズや鏡などの光学系、評価用のカメラ、実験補助品などを順次整備していく。一方で、共同研究を進める京都大学のせいめい望遠鏡への搭載を目指した検討、ハワイ観測所すばる望遠鏡の太陽系外惑星研究のためのコロナグラフ極限補償光学グループ(Subaru Coronagraph Extreme Adaptive Optics)へのアルゴリズム実装を目指した検討を開始する。また、他の計画研究のメンバーと共同研究の議論をオンラインで開始する。特に、大阪大とは天体から大気、望遠鏡観測装置までのデジタルツインモデルの構成の議論を開始する。また、電通大、東海大とはレーザー空間通信への応用を含めた連携を模索する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 6件、 査読あり 4件) 学会発表 (5件)
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