研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
20H05896
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田中 謙二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (30329700)
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研究分担者 |
松井 広 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20435530)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 血管オプトジェネティクス / 神経活動 / 自由行動 |
研究実績の概要 |
神経グリア相互作用には、血管から十分なエネルギーが供給されることによって達成される。神経グリア相互作用を血流がどのように制御するかを明らかにする目的で、脳局所血流を操作する実験系を開発した(2020年の成果)。2021年度は、脳血管のうち、線条体を栄養する中大脳動脈の穿通枝に着目してエネルギー供給と神経活動、行動の関係性を明らかにした。線条体穿通枝を血管オプトジェネティクスによって収縮させ、線条体への血流を低下させると、マウスの自由行動が減少した。この自由行動減少は、光刺激開始から20秒程度経過後に観察された。一方で血管を弛緩させ、線条体への血流を増加させても自由行動には変化はなかった。次に血流と神経活動の相互関係を調べる目的で、線条体神経の発火を計測した。線条体投射神経は安静時には殆ど発火せず、multi unit activityは5ヘルツ以下である。このような低頻度の発火状態で血流を低下させても、更に発火頻度が低下する現象は観察されなかった。線条体の下方に位置するventral pallidumに主要神経細胞は20-40ヘルツの高頻度で発火し続ける細胞である。この高頻度発火神経細胞は、オプトジェネティクスによる血管収縮にシャープに反応し、光刺激開始から10秒後に発火頻度が低下し、100秒後に元の高頻度に戻る可逆的な反応であった。自由行動制御を司ると考えられている線条体投射神経細胞が、どのような状況においても血流低下にinsensiveなのか調べる目的で、覚せい剤を使用した。覚せい剤使用下では、線条体投射神経の発火頻度が上昇し、血流低下でそれが減少することがわかった。以上の結果から、線条体における神経活動とエネルギー需要の相関が明らかになり、エネルギー供給と行動の相関がin vivo実験で実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自由行動下におけるエネルギー供給システムだけではなく、学習やてんかんなどの正常・病態時のエネルギー供給についても実験条件を固めつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内エネルギーの指標である細胞内乳酸、細胞内ピルビン酸、細胞内pHを計測する実験系の構築を予定通り進めていく。
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