計画研究
本計画研究はエクソソームを媒体とした脳-身体コミュニケーションに着目し、グリアエクソソームによる体内環境情報の読み出しおよび脳内エクソソームによる臓器への影響について解析しグリアが司る体内制御デコーディングを明らかにする役割を担う。エクソソームは全ての細胞から産生される30-150nmの微小胞であり、もともと細胞のゴミ処理機構と考えられて来たが、新たな細胞間コミュニケーションツールとしての重要な機能が注目されている。本研究提案では、脳による複合的生体制御をテーマとし、脳とその他の臓器を繋ぐ細胞外微粒子に着目した検討を行う。未知の脳―身体連関の制御シグナルの解明を目指すため、脳・肺・肝臓・脾臓・腎臓・骨髄(免疫細胞)・腸から組織由来の細胞外微粒子を回収し、微粒子のサイズ、産生量、タンパク含有量並びにプロテオミクス解析により含有タンパク質の種類を同定する。さらに、国内1台目となる微粒子タンパク質解析機器ExoViewを用いて各臓器並びに脳内細胞由来エクソソームの性質を明らかにする。本年においては、正常時に比べて疾患環境下での脳―臓器クロストークの違いについて比較研究を展開するため、マウス末梢血に投与したエクソソームが脳内のどの領域に取り込まれやすいのか、そしてどの細胞が特に取り込むのかについて検討を進めた。脳には脳関門という物質の通り抜けを制限するメッシュの様な関門があり、エクソソームはそこを通り抜けることができること、そしてそれは特定のエクソソーム限定であることがわかった。今後取り込まれやすいエクソソームの特徴を明らかにしていくことを目指す。
2: おおむね順調に進展している
超遠心機の購入も済み、サンプル調整が容易になった。エクソソームが末梢血から脳内へ取り込まれることが確認でき、そこには特定の機構があることもわかったので、今後その違いについてなど検討を進めていく状態となっている。
研究代表者がこれまでに明らかにしたエクソソームのメカニズムを軸に、正常時および炎症促進時、脳内グリア活性時、また睡眠導入時など様々な体内環境変化に応じたエクソソーム変化を調べていく。そこでまず、上記状態における様々なマウス臓器由来エクソソームを回収しマウス末梢血へ投与し脳内への取り込み及び脳内環境への影響を調べると共に、脳由来エクソソームを回収し臓器への取り込み・影響を解析することを目指す。様々な体内状態のエクソソームをまずは回収し、そのエクソソームのプロテオミクス 解析を進める。また、そのエクソソームをマウス末梢血へ投与することでどの臓器へ取り込まれやすいかなど検討を進める。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 7件、 招待講演 7件) 図書 (1件)
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