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2021 年度 実績報告書

発達期小脳におけるシナプス刈り込みの臨界期の解明

計画研究

研究領域脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作
研究課題/領域番号 20H05915
研究機関東京大学

研究代表者

狩野 方伸  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (40185963)

研究期間 (年度) 2020-11-19 – 2025-03-31
キーワードシナプス刈り込み / 生後発達 / 小脳 / 登上線維 / プルキンエ細胞
研究実績の概要

シナプス刈り込みは発達期の神経系において普遍的にみられ、大人の神経回路を作るための仕組みと考えられているが、小脳の登上線維とプルキンエ細胞間のシナプスの生後発達は、その代表例として広く認知されている。出生直後のマウスのプルキンエ細胞は、その細胞体に5本以上の登上線維からほぼ同じ強さの興奮性シナプス入力を受ける。生後3日から7日の間に、1本の登上線維に由来する入力のみが強くなり、強くなった登上線維だけがプルキンエ細胞の細胞体から樹状突起に伸展してシナプス領域を拡大する。一方、プルキンエ細胞の細胞体に残された登上線維シナプスは2段階の過程(前期過程、後期過程)を経て除去され、生後17日以降には殆どのプルキンエ細胞が1本の強い登上線維によって近位樹状突起を支配されるようになる。これらは生後発達の特定の時期に起こり、その異常が永続的な神経回路の障害を起こすことから、それぞれが典型的な臨界期現象といえる。本研究は、これら4つの臨界期を決定するメカニズムについて、神経活動が如何にして永続的なシナプス結合の変化をもたらすかに着目し、そのメカニズムの解明を目指している。
令和3年度は、転写因子Myocyte enhancer factor 2 (MEF2) familyのうち、プルキンエ細胞に強く発現する分子のプルキンエ細胞特異的KOマウスを解析し、生後3週目に登上線維シナプス刈り込みが障害されており、これが、P/Q型電位依存性カルシウムチャネル(P/Q-VDCC)の下流で働くことを示唆する結果を得た。また、プルキンエ細胞においてP/Q-VDCCによって活性化されると考えられる別の転写因子が、生後2週目後半から3週目の後期刈り込みと、登上線維の樹状突起へのシナプス領域の拡大に関わることを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は9月末まで、COVID-19の感染対策のための緊急事態宣言が発令された期間と多くが重なっており、研究機関の活動制限もあって、維持できるマウスのケージ総数が制限された。このため、この期間は解析に必要なノックアウトマウスおよびノックダウンマウスを当初の予定どおりに得ることができなかったが、10月以降はマウスの状況は回復した。その結果、「6.研究実績の概要」に記載したように、MEF2 familyのうち、プルキンエ細胞に強く発現する分子がP/Q-VDCCの下流で生後3週目の登上線維シナプス刈り込みに関わること、また、プルキンエ細胞においてP/Q-VDCCによって活性化されると考えられる別の転写因子が、生後2週目後半から3週目の後期刈り込みと、登上線維の樹状突起へのシナプス領域の拡大に関わることを示す結果を得た。これらにより、令和3年度の当初の目標をほぼ達成することができた。

今後の研究の推進方策

引き続き、プルキンエ細胞におけるMEF2 family転写因子の登上線維シナプス刈り込みにおける役割とその分子メカニズムを追求する。特に、令和3年度までの研究で対象にしたものとは別の分子を対象とする。この分子のプルキンエ細胞特異的ノックアウトマウスを対象に、電気生理学的解析と形態学的解析により、登上線維シナプス刈り込みのどの段階にどの程度の異常が生じるのかを精査する。また、対象分子のプルキンエ細胞特異的ノックアウトマウスにおいて、発達期のプルキンエ細胞でP/Q-VDCCまたは代謝型グルタミン酸受容体1(mGluR1)をノックダウンした効果を、野生型マウスにおける結果と比較する。これにより、対象分子がP/Q-VDCCまたはmGluR1と同じ分子パスウェイを介して登上線維シナプス刈り込みに関わるのかを明らかにする。さらに、対象分子のプルキンエ細胞特異的ノックアウトマウスの小脳を用いてRNA sequencingを行い、野生型マウスと比較して、プルキンエ細胞において発現が変動している遺伝子を同定する。
プルキンエ細胞においてP/Q-VDCCによって活性化されると考えられる転写因子について、プルキンエ細胞特異的ノックダウンによって、登上線維シナプス刈り込みのどの段階にどの程度の異常が生じるのかを、これまでに引き続いて、電気生理学的解析と形態学的解析を用いて明らかにする。この転写因子のプルキンエ細胞特異的ノックダウンに加えて、P/Q-VDCCまたはmGluR1をノックダウンした効果を比較することによって、この転写因子がどちらの分子パスウェイを介して登上線維シナプス刈り込みに関わるのかを明らかにする。さらに、この転写因子をプルキンエ細胞特異的にノックダウンした小脳を対象にRNA sequencing を行い、プルキンエ細胞で変動している分子群を同定する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)

  • [国際共同研究] ミュンヘン工科大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ミュンヘン工科大学
  • [雑誌論文] Endocannabinoid-Mediated Control of Neural Circuit Excitability and Epileptic Seizures2022

    • 著者名/発表者名
      Sugaya Yuki、Kano Masanobu
    • 雑誌名

      Frontiers in Neural Circuits

      巻: 15 ページ: 781113~781113

    • DOI

      10.3389/fncir.2021.781113

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Flp-dependent G-CaMP9a transgenic mouse for neuronal imaging in?vivo2022

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto Masayuki、Inoue Masatoshi、Takeuchi Atsuya、Kobari Shigetaka、Yokoyama Tatsushi、Horigane Shin-ichiro、Takemoto-Kimura Sayaka、Abe Manabu、Sakimura Kenji、Kano Masanobu、Kitamura Kazuo、Fujii Hajime、Bito Haruhiko
    • 雑誌名

      Cell Reports Methods

      巻: 2 ページ: 100168~100168

    • DOI

      10.1016/j.crmeth.2022.100168

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Combined glyoxalase 1 dysfunction and vitamin B6 deficiency in a schizophrenia model system causes mitochondrial dysfunction in the prefrontal cortex2021

    • 著者名/発表者名
      Toriumi Kazuya、Berto Stefano、Koike Shin、Usui Noriyoshi、Dan Takashi、Suzuki Kazuhiro、Miyashita Mitsuhiro、Horiuchi Yasue、Yoshikawa Akane、Asakura Mai、Nagahama Kenichiro、Lin Hsiao-Chun、Sugaya Yuki、Watanabe Takaki、Kano Masanobu、Ogasawara Yuki、Miyata Toshio、Itokawa Masanari、Konopka Genevieve、Arai Makoto
    • 雑誌名

      Redox Biology

      巻: 45 ページ: 102057~102057

    • DOI

      10.1016/j.redox.2021.102057

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Carbon powder-filled microelectrode: An easy-to-fabricate probe for cellular electrochemistry2021

    • 著者名/発表者名
      Tsujimura Asuka、Kamae Yuhi、Kawasaki Hikaru、Nagai Haruki、Kano Masanobu、Tabata Toshihide
    • 雑誌名

      Analytical Biochemistry

      巻: 629 ページ: 114316~114316

    • DOI

      10.1016/j.ab.2021.114316

    • 査読あり
  • [雑誌論文] mGluR1 signaling in cerebellar Purkinje cells: Subcellular organization and involvement in cerebellar function and disease2021

    • 著者名/発表者名
      Yamasaki Miwako、Aiba Atsu、Kano Masanobu、Watanabe Masahiko
    • 雑誌名

      Neuropharmacology

      巻: 194 ページ: 108629~108629

    • DOI

      10.1016/j.neuropharm.2021.108629

    • 査読あり
  • [学会発表] Endocannabinoid-dependent formation of columnar axonal projection of layer 4 neurons in the mouse cerebral cortex2022

    • 著者名/発表者名
      Chiaki Itami, Naofumi Uesaka, Jui-Yen Huang, Hui-Chen Lu, Kenji Sakimura, Masanobu Kano, Fumitaka Kimura
    • 学会等名
      第99回日本生理学会大会
  • [学会発表] 自由行動下で記憶想起課題中のマウス歯状回顆粒細胞の活動2021

    • 著者名/発表者名
      菅谷 佑樹、Ruiz Alvaro、狩野 方伸
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 発達期小脳においてプレシナプスのLAR-RPTPsはプルキンエ細胞樹状突起上の登上線維シナプス領域の拡大を促進する2021

    • 著者名/発表者名
      奥野 優人、渡邉 貴樹、佐郡 和人、狩野 方伸
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
    • 国際学会
  • [学会発表] 自発レバー引き課題を行うマウスにおける小脳プルキンエ細胞の複雑スパイク活動の符号化モデル解析2021

    • 著者名/発表者名
      池添 貢司、日高 直樹、真仁田 聡、村上 誠祥、堤 新一郎、礒村 宜和、狩野 方伸、喜多村 和郎
    • 学会等名
      第44回日本神経科学大会
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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