研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
20H05917
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大木 研一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50332622)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 臨界期 / 大脳皮質 / 神経回路 / 多様性 / 発達 |
研究実績の概要 |
生後まもないマウス(5日齢、P5)の大脳皮質の自発活動を観察し、機能的結合のマップを作成したところ、V1および各高次視覚野に既にレチノトピー(網膜部位対応)が存在し、V1および高次視覚野のレチノトピーが対応する場所が、同期して自発活動を示すことが観察された。マウスの両眼を除去したところ、この自発活動は大きく減少することが観察され、網膜由来の活動が、V1と高次視覚野に伝わっていることが示唆された。それでは、P5の時点で高次視覚野にみられる自発活動は、V1から伝わるのだろうか、それとも高次視床(LPN)から伝わるのだろうか。 P5での機能的結合の強さを調べたところ、高次視覚野間の相関は強いが、V1と各高次視覚野の間の相関は弱かった。また、高次視覚野間でも、背側経路の高次視覚野同士の相関は高く、腹側経路の高次視覚野同士の相関も高いが、背側経路と腹側経路に属する高次視覚野間の相関は低かった。このことから、P5の時点で、自発活動が高次視覚野に到達する経路は、おそらく高次視床経由であり、背側経路と腹側経路で経路が分離しているのではないかということが示唆された。 このことを解剖学的に検証するため、P5で各高次視覚野に、トレーサーを注入し、P5の段階で、どの解剖学的結合が存在するかを調べた。V1から高次視覚野への皮質間投射はP5でほとんど発達していないことがわかった。高次視覚野間の皮質間投射もほとんど発達していないことがわかった。さらに、高次視床(LPN)から高次視覚野への投射は、P5の段階で十分発達していることがわかった。背側経路の高次視覚野、腹側経路の高次視覚野はLPNの同じ部位から投射を受けているのかを検証したところ、背側経路・腹側経路によって、LPNの異なる部位から投射を受けていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り順調に結果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に、V1から高次視覚野への皮質間投射はP5であまり発達しておらず、高次視覚野間の皮質間投射も十分発達していないことがわかった。一方、高次視床(LPN)から高次視覚野への投射は、P5の段階で十分発達していることがわかり、背側経路の高次視覚野、腹側経路の高次視覚野はLPNの異なる部位から投射を受けていることがわかった。 このことから、P5の段階では、網膜由来の自発活動が、V1を介さず、LPNを介して高次視覚野に到達している可能性が示唆された。今後は、このことを、以下の二つの方法で検証する。(1)V1をGABA agonistで抑制しても、高次視覚野の自発活動は減少しない、(2)一方、LPNをGABA agonistで抑制すると、高次視覚野の自発活動は大きく減少する。以上により、各高次視覚野に、高次視床経由で、網膜由来の自発活動が伝わっているかどうか検証する。 さらに、この網膜から高次視床経由で高次視覚野に伝わってくる自発活動の役割について検証する。この自発活動は、V1から高次視覚野、または高次視覚野間の結合の形成に重要であると仮説を立て、これを検証するため、生後すぐにマウスの両眼を除去し、V1から高次視覚野、または高次視覚野間の結合の発達が影響を受けるかどうかを検証する。
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