計画研究
遺伝子非翻訳領域内のリピート配列の異常伸長を原因とする筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症(SCA)などの神経変性疾患において、リピート関連非AUG依存性(RAN)翻訳という新規の翻訳機構によりリピートペプチド(RAN-P)が産生され、神経変性を引き起こすことが明らかになった。本研究では、RAN翻訳のメカニズムとそれに伴う神経変性メカニズムを解明することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。1)RAN翻訳レポーター細胞を用いたRAN翻訳分子機構の解明:C9-ALSの原因となるC9orf72遺伝子の異常伸長GGGGCCリピートの下流にNanolucを挿入したRAN翻訳レポーターコンストラクトを発現する培養細胞発現実験系において、様々なRNA結合タンパク質(RBP)や翻訳開始因子、RNA輸送・分解関連分子などのノックダウンによるRAN翻訳に及ぼす影響を検討した。2)疾患モデル細胞・ショウジョウバエを用いたRAN翻訳の神経変性病態への役割の解明:異常伸長GGGGCCリピートRNAを発現するC9-ALSモデルショウジョウバエを用いて、様々なRBPや翻訳開始因子などの過剰発現/ノックダウンによるRAN翻訳制および複眼変性に対する影響を検討し、有意な影響を及ぼす複数のRAN翻訳制御分子候補を同定した。3)RAN翻訳ペプチドによる神経変性機序の解明:RAN-Pを発現する培養細胞実験系において、細胞内の非膜性オルガネラとの関連性を検討し、RAN-Pの共局在および非膜性オルガネラの機能障害を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
遺伝子組み換えDNA実験及び動物実験の承認が遅れたために、研究計画を変更し細胞・ショウジョウバエ実験の開始が遅れたが、変更後は予定通り、研究計画を完了した。
今後、以下のような研究を進める。1)RAN翻訳レポーター細胞を用いた実験系を用いて、RAN翻訳に影響を及ぼすRBPや翻訳開始因子、RNA輸送・分解関連分子などを同定し、RAN翻訳のメカニズムを明らかにする。2)疾患モデル細胞・ショウジョウバエを用いて、RAN翻訳制御分子候補のRAN翻訳、細胞毒性および神経変性に対する影響を明らかにし、RAN翻訳の神経変性病態への役割を解明する。3)RAN翻訳により産生されるRAN-Pが、LCドメインタンパク質の液-液相分離による液滴形成や、核小体やストレス顆粒など非膜性オルガネラの形成・機能に与える影響を明らかにし、神経変性メカニズムを解明する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Commun. Biol.
巻: 4 ページ: 771
10.1038/s42003-021-02304-w
J. Biol. Chem.
巻: 297 ページ: 101120
10.1016/j.jbc.2021.101120
巻: 297 ページ: 101284
10.1016/j.jbc.2021.101284
Front. Neurosci.
巻: 15 ページ: 648133
10.3389/fnins.2021.648133
Biochem. Soc. Trans.
巻: 50 ページ: 119-134
10.1042/BST20200143
http://proteins.jp/