計画研究
近年、未知のオープンリーディングフレームの発見や非典型的な翻訳開始や終結などが多数見出されており、実際のプロテオームはより複雑でこれまでの常識の範囲の中では探出せないタンパク質を多数含んでいる可能性が高まっている。このような未知のプロテオームの探索には、核酸オミクス解析等で得られた情報を用いて質量分析データを解析する、いわゆるプロテオゲノミクスの利用が考えられる。本研究では、さまざまな先端技術を取り入れることで新たなプロテオゲノミクスの枠組みである『仮説駆動型プロテオゲノミクス解析基盤』を創出を目指す。R2年度は、1)未開拓プロテオーム探索プローブデザインツールの構築、および2)大規模ペプチド評品の取得技術の確立を実施した。 1)に関しては、任意のタンパク質配列や核酸配列情報を登録し、質量分析に適した感度と特異度を有するペプチドを選定し可視化できるデータベースの開発を行った。さらに、他の計画班との連携のもとにRiboSeqデータなどを取り込み、新規ORF情報を質量分析データ解析に利用できるよう整備した。2)に関しては、まず内部標準ペプチド連結体取得法を確立した。上述したデータベースを用いて、標的タンパク質特異的ペプチドを組み合わせた連結体をデザインした。また連結体タンパク質を同位体標識するが必要であるが、標識効率を最大限高めるためにアミノ酸合成経路酵素を欠失した変異株を作製し、高効率(99.95-99.97%)に標識を入れることを可能とした。次に、それぞれの連結体を識別定量するために定量タグ(QuantiCode)を開発した。最終的に100種類に上る異なるQuantiCodeタグを開発し、これらを組み込んだベクター系を構築した。タグを付加した連結体は同時に試料中に添加することが可能であり、正確かつ容易に絶対定量を実施できることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルス感染症による影響:輸入制限により実験装置部品の納期遅延により、本研究に必要な機器の年度内導入が不可能となった。しかしながら、実験資材を不要とするデータベース開発や分子生物学的な実験等に注力し、これらが予定よりも進んだことから、機器導入後すぐに予定の実験に取り掛かれる準備が整った。
新たなプロテオゲノミクス解析基盤に必要なインフォマティクスや評品タンパク質発現系の構築はR2年度で完了した。これを用いて新規タンパウ質を解析するには、高スループットかつ高深度プロテオミクスの解析基盤を確立する必要がある。R4年度に導入される質量分析計を用いて、近年注目されているデータ非依存分析法やイオンモビリティーを用いた気相分画法、さらには高スループット分析が可能な液体クロマトグラフィーなどを組み合わせて、従来の質量分析計によるタンパク質同定の深度を2倍以上上げることを目指す。確立した技術を用いて新規のオープンリーディングフレームの発見を進める。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
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