研究領域 | DNAの物性から理解するゲノムモダリティ |
研究課題/領域番号 |
20H05938
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平野 達也 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (50212171)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞生物学 / 生化学 / 染色体 / 細胞分裂 / コンデンシン |
研究実績の概要 |
(1)染色体構築におけるループ押出し活性の貢献を明らかにする:コンデンシン I の野生型(WT)複合体およびCAP-Hサブユニットのアミノ末端を欠失した変異型(H-dN)複合体についてループ押出し活性を測定した(領域代表・西山との共同研究)。その結果、後者ではループ形成頻度が顕著に上昇することを見出した。この結果は、この変異型複合体がカエル卵抽出液中でより強い染色体構築能を有することをうまく説明する。 (2)コンデンシン機能におけるHEATリピートと天然変性領域の役割を明らかにする:カエル卵抽出液を用いた解析から、CAP-D2サブユニットのカルボキシル末端天然変性領域(C-tail)の欠失変異がコンデンシンI による染色体構築に大きな影響を与えないのに対して、CAP-D3サブユニットのC-tailの欠失変異はコンデンシンII による染色体構築を顕著に促進させることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)卵抽出液を用いた機能アッセイとループ押出しアッセイとの間には、概念的にも技術的にも大きなギャップがあると思われてきたが、コンデンシン I のCAP-Hサブユニットのアミノ末端を欠失した変異型複合体を用いた実験からそのギャップを埋めるための大きなヒントが得られた。 (2)天然変性領域による制御機構が2つのコンデンシン複合体の間で異なることが明確になってきた。すなわち、コンデンシンIではCAP-HサブユニットのN末端が、コンデンシンIIではCAP-D3サブユニットのC末端が、それぞれの複合体の負の制御に関わっている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)染色体構築におけるループ押出し活性の貢献を明らかにする:ループ押出しアッセイをさらに洗練することにより、2つの機能アッセイの間にあるギャップをさらに埋めることが可能かどうかを探る。特に、2つ以上のコンデンシン複合体が同一のDNA分子上で衝突したときの振る舞いや、トポイソメラーゼIIと共存させたときの振る舞いについて、野生型複合体と各種変異型複合体の間で比較解析する。 (2)コンデンシン機能におけるHEATリピートと天然変性領域の役割を明らかにする:CAP-D3サブユニットのC-tailの欠失変異がコンデンシンII による染色体構築を顕著に促進させるという観察の背景にある分子メカニズムを探る。CAP-D3 C-tail にはCdk1コンセンサスが多数存在する。この領域がコンデンシンIIの機能に対して抑制的に働いており、Cdk1によるリン酸化がその抑制を解除するという仮説を検証するため、カエル卵抽出液にリン酸化欠損型複合体を導入してその染色体構築能を調べる。また、抽出液を用いない機能アッセイを用いて、Cdk1によるリン酸化がコンデンシンIIの活性を上昇させるか否かを検討する。
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