研究領域 | 社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化 |
研究課題/領域番号 |
20H05964
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀山 貴史 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60314530)
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研究分担者 |
湊 真一 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10374612)
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00256471)
宇野 裕之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60244670)
竹田 正幸 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50216909)
番原 睦則 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (80290774)
松井 泰子 東海大学, 理学部, 教授 (10264582)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 大規模離散構造 / 列挙アルゴリズム / 文字列アルゴリズム / SATアルゴリズム / グラフアルゴリズム |
研究実績の概要 |
情報化社会におけるデータの規模の拡大や組合せの複雑化などにより、理論と実用の両方の観点から、問題が内包する大規模離散構造を利用したアルゴリズムの設計技法が求められている。本研究では、これまで個別の分野で個々のアイデアに基づいて設計されてきたアルゴリズムを理論計算機科学の観点から改めて観察することで、大規模離散構造を理解し、その構造をどのように利用しているかを整理している。このために、二分決定グラフ (BDD; Binary Decision Diagram) やその亜種の零抑制型二分決定グラフ (ZDD; Zerosuppressed BDD) のアルゴリズム、逆探索による列挙アルゴリズム、グラフ探索アルゴリズム、文字列処理アルゴリズムなど、指数関数的に大きな解空間を持つ問題を対象に、多面的なテーマにて理論と実用の両方の観点からケースワークを行った。たとえば、タイリングに関する問題では、整数計画法、論理式の充足可能性判定 (SAT; satisfiability problem) アルゴリズム、BDD/ZDD などのさまざまなアプローチが個別の分野で研究されている。この問題において、解の数え上げと列挙の観点から、それらの特性や性能比較を行った。また、計算量理論の観点から、解を求めるための計算複雑さだけでなく、組合せ遷移問題にも取り組んだ。ここで、組合せ遷移問題は、解空間の中の与えられた2つの解に対し、局所的な解の変形 (遷移) を繰り返すことで互いに移りあえるかを問う問題であり、従来とは異なる観点からの大規模離散構造へのアプローチである。グラフ上でのトークンスライディングの最短遷移に関する理論的研究の他に、SAT の発展形の1つである解集合プログラミング (ASP; Answer Set Programming) の観点から組合せ遷移ソルバーに関する研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本学術変革領域の領域集会やSlackなどを通じて本研究課題の目的や他研究課題との連携について周知し、理論面や実装面で関連する知見を持つ領域内外の研究者の参加を促している。コロナ禍であるため、オンライン会議を主として用いた。一方で、地域ごとに感染者数が増減する状況で、感染拡大防止に配慮した上で議論の核となるごく少数が集まり、オンライン会議と併用することで、遠隔からも参加できるオンライン会議と顔を合わせての密な議論の両方の効果を狙ったハイブリッド形態での共同研究のスタイルを模索した。2021年度内では、研究の進展状況に合わせて、2021年4月 (ハイブリッド)、6月 (オンライン)、7月 (オンライン) x 2回、8月 (オンライン)、9月 (オンライン) x 2回、2022年1月 (オンライン)、3月 (ハイブリッド) にB01班の研究集会を開催した。これらの研究集会での議論は拡大的に発展し、本学術領域の研究者だけでなく、領域外の研究協力者である酒井や橋本も加わって、タイリングにおける数計画法や BDD/ZDD などのさまざまアプローチの比較に関する研究成果へと結びついている。この他に、RA雇用によるA02班とB01班の連携の分野横断セミナーも行っている。また、本研究課題の支援・発展させるためのポスドク研究員として、2021年6月から Duc A. Hoang を京都大学寺町オフィスにて、10月から三重野琢也を北海道大学にてそれぞれ雇用している。各配置場所にて、Hoang は組合せ遷移問題について B02班の David Avis との連携、三重野は文字列処理アルゴリズムと列挙との融合的研究について堀山や研究協力者の稲永との連携を始めており、基本的な研究結果が出始めるなど順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況を踏まえつつ研究目的を鑑み、入力のサイズに対して指数関数的に大きな解空間を持つ組合せ問題に対し、理論や実用の個別の分野において個別のアイデアに基づいて設計されてきた成功事例をケースワークとして理論計算機科学の観点から多面的な研究テーマにて改めて観察し、その大規模離散構造の理解へと取り組む。たとえば、同形ピースの箱詰め問題などを例題に、整数計画法や SAT/ASPアルゴリズム、BDD/ZDD、Dancing Links などのさまざまなアプローチに対する相互理解と技術の融合、問題の定式化などの検討を行う。また、個別の分野で培ってきた知見を他分野にも共有し理解を促進するために、研究代表者や研究分担者の取り組んでいる代表的な問題やその技術を互いに披露し、幅広い視点から未解決問題に取り組む。こうした取り組みでは、本研究課題の研究者内のみに限定せず、本学術変革領域内外でも関心を持つ研究者に知見を共有するとともに、研究者の技術との融合のきっかけとする。このために、新型コロナウィルスの影響による社会的状況を考慮しつつ、対面での密な議論と、オンライン会議による遠隔での議論を併用しつつ、それぞれの利点を活かした議論を進める。SSSS (Short-Stay Seminar Series) は本学術変革領域内外の研究者の参加が継続的にあり、本研究課題の研究スタイルとして上手く機能しているため、感染拡大防止に配慮した上で引き続き定期的に開催する。
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