研究領域 | 社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化 |
研究課題/領域番号 |
20H05967
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧野 和久 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (60294162)
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研究分担者 |
小野 廣隆 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (00346826)
定兼 邦彦 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20323090)
河村 彰星 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (20600117)
玉置 卓 兵庫県立大学, 社会情報科学部, 准教授 (40432413)
瀧本 英二 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50236395)
渋谷 哲朗 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60396893)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | アルゴリズム論 / データ構造 |
研究実績の概要 |
本研究課題を大きく1.アルゴリズム研究,2.データ構造研究に分ける形で取り組み,チームとして得られた研究成果を以下では1,2の各テーマで得られた結果を概観する. 1.[最適化アルゴリズム] 牧野は離散最適化で重要な役割を果たすマトロイドに関連する分割問題に対する計算量解析,高性能なアルゴリズム開発に成功した.小野はグラフ最適化問題の観点から,グラフ上での組合せゲームに対するターン数に関する現時点で最速のFPTアルゴリズムを与えるとともに高速化限界を示した.[論理学的アルゴリズム]牧野は,論理式の各節が満たされるかどうかの可能なパターンをすべて列挙する問題に対するアルゴリズム開発を行った. 特に重要な未解決問題であったk-CNFに対して逐次多項式時間アルゴリズムの構築に成功した.玉置は,量子回路の出力分布をサンプリングする問題が, ある計算論的仮説の下で古典計算では近似することさえ指数時間必要であることを示した. [学習論的アルゴリズム]瀧本はエキスパート統合問題に対し,エキスパートの成績を表す損失行列が低ランク行列で近似できるときよりタイトなリグレット上界を持つアルゴリズムを設計した.またオンライン行列補完問題に対し妥当な仮定の下で誤り回数のタイトな上界を導出することに成功した. 2.[圧縮データ構造] 定兼はグラフのパラメタの1つであるクリーク幅が小さいグラフに対し,初めての簡潔表現(情報理論的に最小なサイズでの表現)を与えた.[計算生物学におけるデータ構造] 渋谷は次世代シークエンサーなどの解析において重要な超大規模なk-mer集合のグラフ理論に基づいた圧縮手法の開発に成功した.また大規模ゲノム解析において重要なプライバシー保護に関し,差分プライバシーの観点からのゲノムワイド相関解析データ公開におけるプライバシー保護手法の開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要に概観したようにほとんどの研究テーマにおいて,数件以上の新成果が得られ,それらは査読付き論文誌・国際学会会議録として採択に至っている.採択された論文誌・国際会議の多くはハイレベルあるいは定評のあるものがほとんどであり,メンバーがそれぞれ自分の強みを生かしながら活躍していると言える.またそれらの中にはメンバーの指導する学生が国際学会においてBest Student Paper Awardを受賞したもの[Yoshiwatari+, 2022],国内学会等で論文賞・発表賞を受賞したものなども含まれており,本研究課題推進は若手研究者育成にも強く関与している. さらに,研究分担者の定兼・渋谷が「大規模メタゲノム解析の基盤技術の研究」に関して文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞するなど(本研究課題に深く関連する)研究活動が高く評価されている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2023年に研究実施)以降は,過去3年抑制されてきた対面でのミーティング・セミナー等が開催しやすくなると考えられる.このため積極的なメンバー同士の交流を促し,あるいは機会を設定することにより,アルゴリズム論に関する新たなアイデアの融合・創出の可能性を高める.そのような融合における核となりうる研究テーマ例の一部を以下に挙げる: [最適化アルゴリズム] 小野はPSPACEなどNP完全よりもより高い階層に位置する最適化問題に対するアルゴリズム設計に取り組む.[論理的アルゴリズム]玉置は,論理的アルゴリズム設計の観点から, 論理回路の充足可能性問題に対するアルゴリズムとその応用, 量子版の制約充足問題である局所ハミルトニアン問題に対するアルゴリズムの研究に取り組む予定である. [学習論的アルゴリズム]瀧本は,計算学習理論やオンライン意思決定の理論およびその応用に関する研究に取り組む予定である. [圧縮データ構造] 定兼は様々なグラフクラスに対する簡潔表現の研究を行う.また,大量の文字列集合を圧縮して保存し,そこから高速に検索するための索引構造についての研究も行う.[計算生物学におけるデータ構造] 渋谷は,生物情報学・医療情報学などで重要とされる問題についてアルゴリズム設計理論の応用を探りながら,より大きなインパクトのある研究をめざし研究を続けていく.
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