研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
20H05969
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊田 太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80422377)
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研究分担者 |
村田 智 東北大学, 工学研究科, 教授 (10334533)
東 俊一 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40420400)
礒川 悌次郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70336832)
田中 幹人 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70453975)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | リポソーム / マイクロ流体デバイス / ケミカルAIの制御理論 / ケミカルAIの計算能 / 倫理的・法的・社会的影響(ELSI) |
研究実績の概要 |
本研究課題は,「分子サイバネティクス」においてケミカルAIを実装できる実験システムおよび理論モデルを開発し,科学技術社会論からみた意義を探究し,責任のある科学・イノベーション(RRI)を実践する. (1)実験システムとして,ケミカルAIの基盤となるリポソームをマイクロ流体デバイス内で3個連結し,その動態を自動記録できる基盤技術の確立を研究目的としている.また,東北大学にインテグレーション拠点を構築する.本年度内に,リポソームをマイクロ流体デバイス内で3個連結して,統計的に動態計測できる基本技術を確立した。また,その動態を自動記録し,遠隔操作可能なシステムのインターフェースの開発を開始した。また,B01班, C01班,D01班の各研究グループが構築する分子デバイスの評価を可能とする2連油中水滴形成治具を頒布し,各研究グループからのフィードバックによって装置改良して開発を進めた。 (2)理論モデルについては,感覚・回路・展開の機能をもつ3種のリポソームを特定の順序に並べた配列のモデル(SPAユニットと呼ぶ)を構築し,それをさらに多数結合して大規模な分子システムの学習能力の数理的検討を行うことを目標としている.本年度では,SPAユニットが結合することによる計算能について,木構造の計算アルゴリズムを新たに開発したり,ブラウン運動と代謝をカップリングさせた計算システムを構築したりした。 (3)科学技術社会論的研究では,「分子サイバネティクス」が最先端の化学技術におけるRRIのロールモデルの一つとなるための提言を行うことを研究目的としている.本年度では,マスメディアの発信情報としてJournal-in-Residenceとして3名のジャーナリストを招いて長期の取材や発信方法について基本的な共通認識を導いた。また,分子サイバネティクスならびに分子ロボティクスに関連する用語や概念に関するマスメディア上の概念解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)実験システム開発:領域内のロードマップ会議や領域会議で提示されたスケジュール通りに,3連接リポソームをマイクロ流体デバイス内で形成できる基本的な機構を構築できた。インテグレーション拠点のための主要な実験装置を用いて,リポソームの作製から観察まで一連の実験を遂行できるようになった。 (2)理論モデル構築:SPAユニットを演算素子とした場合に,木構造において計算能をもつことを理論的に提示することができた。また,一部の構成要素が代謝される新たな計算モデルを構成し,このモデルの計算万能性を示すことができた。 (3)科学技術社会論的研究:マスメディアの発信情報としてJournal-in-Residenceとして3名のジャーナリストを連携して,長期の取材や発信方法について基本的な共通認識を構築し,分子サイバネティクス研究の先端情報が社会でどのように受け止められるかを探る基本的な体制を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
実験システム:豊田と村田は,昨年度,リポソームを粒径選別し3個を同一空間に捕捉・観察できるマイクロ流体デバイスを開発できたことから,このデバイスに基づく遠隔操作型の双方向自動観測実験プラットフォームを構築する.リポソームが流れる経路の一部に電極(蒸着電極)を敷設して,定常流中のリポソームを電圧印加で制御できる機構をマイクロ流体デバイスに組み込み,順序を制御した3個に連接したリポソームの動態を統計解析できる装置を開発し,自動・遠隔操作できるシステムのプロトタイプを構築する.また,インテグレーション拠点として,粒径均一化したリポソームの作製デバイスを開発し,各計画班の分子デバイスの作動条件を精査できる実験システムを構築する。 理論モデル:回路(Processing)機能をもつリポソームについて,主に学習班(C01班)と議論して,リポソーム内での記憶および計算に関するモデルのパラメーターから,ミニマル人工脳全体の機能を議論する理論的基盤を引き続き整備する.特に,東は,昨年度構築した木構造の計算アルゴリズムを基盤に,豊田と村田が構築する3連接リポソームのシステムを数理的に表現するための理論モデルの検討を行う.礒川は,粗視化の立場から,昨年度構築した代謝型の計算システムを改良し,リポソームの配列と変形の自己組織化における計算能力の検討を行う. 科学技術社会論的研究:田中は,市民の最先端科学技術への関心の動向について,引き続き調査を行う.特に,昨年度から開始したJournalist-in-Residenceを活用しつつ,分子サイバネティクス関連の研究のアピアランスと社会受容について,メディア分析を通して解析する。
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