研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
20H05972
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
葛谷 明紀 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00456154)
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研究分担者 |
瀧口 金吾 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (20262842)
コビル アリフ 北海道大学, 理学研究院, 特任講師 (10724867)
上杉 薫 茨城大学, 応用理工学野, 助教 (20737027)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 分子モーター / DNA / 化学エネルギー / リポソーム |
研究実績の概要 |
本研究ではミニマル人工脳を構成する3種のニューロイド(人工細胞リポソーム)のうち、「変形」およびその結果としての「他SPAユニットとの二次的接続」を担うアクチュエータニューロイド(Aユニット)の構築を行い、SPAユニットネットワークの「展開」を実現ことを目的としている。 葛谷はSPAユニットの演算結果の出力として、当初より計画していたリポソーム変形にかわる別の手段として、DNAの分子情報によって制御された生物発光を利用する系を開発した。具体的には、スプリット発光タンパクをDNA鎖の末端で再構築し、別途蛍光色素を導入した相補DNAをハイブリダイゼーションさせることにより、発光タンパクと蛍光色素との間で非常に効率良く生物発光エネルギー移動(BRET)を誘導できることを見いだした。化学合成DNAへの蛍光色素の標識は数や種類を自在に選べるため、BRETに加えてフェルスター共鳴エネルギー移動も組み合わせることで、発光タンパクからの青色発光を変調して鮮明な緑色発光や赤色発光を産み出すことに成功した。 瀧口は引き続き、アクチン封入リポソームの大変形を操作するための技術開発の一環として、アクチン線維のネマティック液晶形成における人工夾雑物(ビーズ)の共封入の効果の検証を行った。 コビルは「DNA修飾微小管/キネシンモーター系とDNAオリガミ構造体を組み合わせた分子人工筋肉」をリポソーム内に封入する条件の検討を行い、これを顕微鏡で可視化することに成功した。 上杉は、リポソームの力学特性を測定する系として、マイクロピペット吸引法システムおよびマイクロ流体デバイスシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報出力機構として、リポソームの変形に加えて、生物発光を利用する系も確立した。また、リポソームの力学特性の計測を行う環境も整った。
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今後の研究の推進方策 |
葛谷はSPAユニットの演算結果の出力として、生物発光を利用する系の最適化を進める。具体的には、C班で開発された分子入力回数計数装置の出力結果を生物発光の色調変化に返還する分子回路を設計、最適化する。さらに、これをリポソーム内に封入して、閉鎖空間内で実行する系を構築する。加えて、リポソーム内にDNAオリガミ構造体を高濃度に封入する系を確立し、DNAオリガミ分子機械の機能をトリガーとしたリポソーム変形機構を開発する。 瀧口はSPA3連リポソーム配列用デバイスに捕捉した状態での、アクチン線維を封入したリポソームの変形の誘導およびその操作に挑戦する。また、前期公募班小嶋開発の装置および上杉先生の流路狭窄法やマイクロピペット吸引法の利用により、アクチン線維を封入したリポソームの膜の力学測定も併せて進めて行く。 上杉はマイクロピペット吸引法システムに関して、システムを半閉鎖系にし、試料の熱対流を抑えることを検討する。また、併せてシステム全体を最適化するための改良を行う。マイクロ流体デバイスシステムに関しては、より効率的に実験ができるよう流路を改良する。また、圧力や流量をより精密に制御できるようシステムの改良を行う。以上の改良を行った後、様々な組成のリポソームや、内部物質を添加したリポソームの機械的特性評価を行う。
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