研究領域 | 環太平洋の環境文明史 |
研究課題/領域番号 |
21101005
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研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
高宮 広土 札幌大学, 文化学部, 教授 (40258752)
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研究分担者 |
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, 動物学研究科, 主任上席研究員 (80250140)
ハドソン マーク 西九州大学, リハビリテーション学部, 教授 (20284052)
新里 貴之 鹿児島大学, 鹿児島大学埋蔵文化財センター, 助教 (40325759)
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キーワード | 環太平洋 / 島嶼環境 / 動物遺体 / 貝類遺体 / 植物遺体 / 島の先史学 / サンゴ礁環境 / フェンサ下層土器 |
研究概要 |
琉球列島において大きな環境へのインパクトはグスク時代にあったことが判明しつつある。研究代表の高宮は今年度は北谷グスクおよびウガンヒラー北方遺跡より出土した植物遺体を主に分析した。グスク時代初期からグスク時代にかけての植物遺体は栽培植物がメインであり、環境への影響が示唆された。また、琉球列島においては環境文明史を検討する上で、炭素十四(以下C14)年代が不十分である。そのため、先史時代からグスク時代にかけての遺跡出土の植物遺体をC14年代測定により理化学的な年代を得た。 研究分担者の黒住は琉球列島では数少ない貝塚時代早期の貝類遺体を検討し、貝類遺体からは貝塚時代の早期から後期にかけてその組成に変化がないことを指摘した。すなわち、先史時代を通してある種の安定した環境・文化伝統が存在したことを示した。また、小島嶼(面積 0.5km^2)においても大規模な森林伐採は貝塚時代後期以降に発生したことが確認された。さらに、貝類遺体分析から沖縄の伊江島と種子島を含む大隅諸島との間に直接的な交流があったことが示唆された。 研究分担者の新里はフェンサグスク貝塚第3次発掘調査を実施した。当遺跡はどちらかと言えば小規模な遺跡であるが、大量の遺物が出土している。第1次調査から継続しているVIトレンチの完掘、水場近くのIX・Xトレンチ調査ほか、周辺測量を行った。また、遺物の洗浄作業を実施した。高宮、黒住、および研究協力者の樋泉は、フェンサグスク発掘調査に参加し、それぞれ植物、貝類、および脊椎動物遺体のサンプリングを実施した。分析中であるが、文化と環境の変遷に関する良好な資料を得た。 研究分担者のマーク・ハドソンは宮古島に所在する長墓遺跡の発掘調査を実施した。調査の対象となった第7層(最下層)出土貝をC14により年代を測定したところ、4000~4200年前という結果を得た。長墓遺跡は宮古諸島において完新世最古の遺跡であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
琉球列島先史・原史時代における環境は推測の域内でしか語れなかったが、この2年半で先史時代および原史時代の環境がかなり明らかになった。フェンサグスク遺跡出土の人工遺物および自然遺物は、上述したように予想以上に大量に出土したが、前者は洗浄を終了し、後者は分析の段階に入っている。また、若手中心の研究会等を通して「研究の目的」に記載した世界的なレベルでの琉球列島の独自性がさらに確認されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更および研究を遂行する上での問題点は特にない。
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