研究領域 | 量子サイバネティクス - 量子制御の融合的研究と量子計算への展開 |
研究課題/領域番号 |
21102002
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
蔡 兆申 独立行政法人理化学研究所, 巨視的量子コヒーレンス研究チーム, チームリーダー (30469910)
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研究分担者 |
NORI FRANCO 独立行政法人理化学研究所, デジタルマテリアル研究チーム, チームリーダー (50415262)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超伝導 / ジョセフソン効果 / 量子ビット / 量子光学 / ハイブリッド量子系 / 蛍光散乱 / レーザー発振 / コヒーレント量子位相スリップ |
研究実績の概要 |
ジョセフソン効果と完全に量子力学的に共役なコヒーレント量子位相スリップ(CQPS)効果の研究を進めている。これは磁束が細い超伝導細線をコヒーレントにトンネルして横切り現象であり、超伝導状態の基本的な輸送現象である。我々は細線構造を含む超伝導ループの分光実験で、CQPS 効果の証拠を初めて実証した。この成果はNature誌に掲載された。更にNbN薄膜とTiN薄膜を使った細線での量子位相スリップのエネルギーを統計的に調べた。その結果、量子位相スリップのエネルギーの線幅に対する指数関数的依存性が確認できた。 我々が開発した磁束駆動型ジョセフソンパラメトリック増幅器のゲインやノイズ特性、温度、パラメトリック発振について評価を行った。またこのパラメトリック増幅器を超伝導磁束量子ビットの分散読出しの測定系における前置増幅器として実際に使用して実験を行った。その結果、信号雑音非を劇的に改善し、量子ビットの単一試行読出しに成功した。また量子跳躍の観測にも成功した。 新規に提案している量子ビットエネルギー調整可能なデバイスを使った結合方式を詳細に解析した。その結果、2ビット論理演算を数十ナノ秒の高速演算時で、99.99%以上のゲート忠実度が達成可能であることが示された。この回路の実験的検証も進めている。この結合方式により、スケーリング可能な量子ビット回路が実現できることが示せた。 高抵抗膜を使った超伝導細線を磁束がトンネルするコヒーレント量子位相スリップ現象(CQPS)を詳細に検証した。 磁束量子ビットのデコヒーレンスの要因の一つである、1/f磁束ゆらぎを比較的高周波領域まで評価できる実験を行い、2.7MHz から1.7 GHz までの広い範囲で観測できた。それぞれのRabi 周波数における磁束ノイズスペクトルを評価し、300 MHz まで磁束ノイズスペクトルが減少することを観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験グループもでは世界で初めてコヒーレント量子位相スリップ現象を確認した。これはジョセフソントンネルと共役関係にある現象であり、それと同様な応用へのインパクトが予想される。理論グループも活発に研究を進め、順調に成果を上げている。実験グループは論文5件を発表し、内Nature系1件である。 理論グループは53件の論文を発表し、内Nature系1件、PRL5件を含んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
特にコヒーレント量子位相スリップに関する実験を新たに進める計画である。特にその輸送特性をしらべる。超伝導量子ビットの量子状態の高精度な読み出しに関しては、ジョセフソンパラメトリック増幅器を使った読み出し法の実験が進んでいる。これを更に高度化し、高効率な磁束量子ビットの単事象読み出しや、単光子観測などを目指した研究を行う。また量子フィードバック等の新たな量子操作技術の確立を目指す。量子情報処理に関しては、量子ビットの結合方式の改善と、それをベースにした多ビット化の実験を行う。小型で原理的にはスケーラブルな量子ビット結合方式を提案し、その実験も進める。また線形の電磁共振器を使う実験等も研究を進める。量子ビットの長寿命化の研究に関連したデコヒーレンス要因の探索などを続けて行う。特にエネルギー緩和の要因について更に詳しく調べる。 理論的研究に関して、超伝導量子ビットを使った量子情報処理や量子シミュレーションの研究を行う。量子情報処理のアルゴリズム等の理論的な研究も合わせて行う。 グループ間の連携研究として、超伝導磁束量子ビットと、微視的量子系の結合した混合量子系の研究を新たに始めようと計画している。
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