光子はそのすぐれた制御性、ならびに自然原子や分子、人工原子とのインターフェイスの容易さなどの利点を有する。本研究では、この光子の特長を活かし、量子サイバネティクスの概念に基づき、光子を用いた量子制御テストベッドを構築する。具体的には、(1)現在幅広く用いられている「フィードバック制御」を利用した量子状態の完全制御、さらに、(2)フィードバック制御における「入力状態」や「検出信号」およびそれらの「比較」デバイスまでをも量子情報化した完全量子フィードバック制御の、光子量子回路による実現を目指す。また、学際融合の観点から、(3)異種量子間状態制御の実現を目標に、ナノフォトニクス技術を利用した光子と異種量子ビットを結合と制御について共同研究を推進する。今年度、(1)の既知入力量子フィードバックに関しては、平成21年度は、既知入力量子フィードバックテストベッドの設計を行った。量子もつれ合い発生部については、今後のフィードバック実験を鑑み、390nmのフェムト秒レーザー励起のパラメトリック下方変換を用いることにし、フォトンカウンタを購入した。また、(2)に関しては、今年度は線形光学制御ノットゲートにおいて発生するエラー量の詳細に検討して論文にまとめるとともに、未知入力に対する量子フィードバックの実現に向け、比較部で用いる量子フレッドキンゲートの設計を実施、サニャック干渉系を利用した草案を得ると共に、安定性などの評価を行った。また、(3)に関して、イオントラップを用いる占部グループと共同研究ミーティングを開催するとともに、異種量子の評価用に、近赤外域の応答感度を持つ光子検出器と時間相関測定装置を購入した。
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