研究領域 | 量子サイバネティクス - 量子制御の融合的研究と量子計算への展開 |
研究課題/領域番号 |
21102007
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
竹内 繁樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80321959)
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キーワード | 量子サイバネテイクス / 量子情報 / 光子 / 制御 / 量子回路 / フィードバック |
研究概要 |
光子はそのすぐれた制御性、ならびに自然原子や分子、人工原子とのインターフェイスの容易さなどの利点を有する。本研究では、この光子の特長を活かし、量子サイバネティクスの概念に基づき、光子を用いた量子制御テストベッドを構築する。具体的には、現在幅広く用いられている「フィードバック制御」を利用した量子状態の制御や推定を、光子量子回路などにより実現する。また、学際融合を目ざし、異種量子間状態制御の実現を目標に、ナノフォトニクス技術を利用した光子と異種量子ビットを結合と制御について研究を推進する。 平成23年度は、公募研究グループの大阪大学藤原彰夫教授との共同研究として、フィードバックの一種であるアダプティブな制御により、光子の量子状態を効率的に測定する新しい方法の実証実験に取り組んだ。その結果、1つのパラメータ推定に関して、強一致ならびに漸近有効性の確認に成功した(論文投稿中)。 また、光子量子回路に関して、Knillらが提唱した「制御ノット量子操作」を実現する、単一光子レベルの非線形光スイッチを組み合わせた光量子回路を、初めて実現した(PNAS2011)。さらに、未知入力の量子フィードバックの実現に向け、比較部で用いる量子フレッドキンゲートの設計構築に取り組んだ。これは、4つの量子ゲート、入力の2光子の他に3つのアンシラ光子を含む5光子の線形光学量子回路として提案されている。平成23年度までは、実験系の設計および、実験の鍵である部分偏光ビームスプリッタの設計、光量子回路の基本部分の構築などを行った。 また、学際融合を目ざした、異種量子間状態制御の実現に関して、平成23年度は、直径300nmのナノテーパ光ファイバに付着させた単一CdSe/ZnS量子ドットからの発光の、高効率(7.4%)での単一モード光ファイバへの結合に成功した(Nano Lett.2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アダブティブ量子推定での、強一致性ならびに漸近有効性の確認に成功するなど、量子フィードバックを用いた量子状態の制御や推定の研究は、順調に進展している。それに加えて、今年度は、Knillらが提唱した「制御ノット量子操作」を実現する、単一光子レベルの非線形光スイッチを組み合わせた光量子回路を、初めて実現(PNAS2011)、他に、直径300ナノメートルのテーパ光ファイバを実現、さらに半導体量子ドットからの発光の単一モード光ファイバへの結合に成功するなど、当初計画以上の成果も上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アダプティブな制御により光子の量子状態の推定する新しい方法の検証実験に関しては、光子源を微弱光源から伝令付き単一光子源へと改良するとともに、パラメーター数を増やした領域での本方法の有効性について確認する予定である。また、量子フレッドキンゲートの検証実験に関しては、実験系の構築、調整を引き続き進め、検証実験へとつなげたい。また、当初計画以上の進展を見せている、ナノ光ファイバーに関しては、ダイヤモンド中の窒素欠陥やイオンなどの他の単一発光体への適用を、他の計画班と連携もはかりながら進める予定である。
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