研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の創成と診断・治療支援の高度化 |
研究課題/領域番号 |
21103003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 嘉伸 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70243219)
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研究分担者 |
堀 雅敏 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00346206)
中本 将彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00380634)
菅本 一臣 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40294061)
山崎 隆治 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40432546)
富山 憲幸 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50294070)
多田 幸生 神戸大学, その他の研究科, 教授 (70135812)
菅野 伸彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70273620)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | CT画像 / 腹部臓器 / 統計アトラス / 多臓器モデル / 多臓器セグメンテーション |
研究実績の概要 |
(1)症例データベースの整備:前年度までに収集・作成した大阪大学病院と他施設(米国NIHなど)のデータベースに、米国USCのCTデータを加え、臓器ラベル領域の基準統一化、臓器領域の追加を行った。特に、腹部CT画像の消化管(食道、胃、十二指腸)、筋肉、血管枝、腎腫瘍、股関節CT画像の神経・血管系、関節軟骨のラベル領域を追加した。 (2)計算解剖モデルと医用画像理解手順の全自動生成:多症例の臓器領域のラベル画像の集合から、各臓器の計算解剖モデル、および、臓器間の形状・位置の依存関係を表す臓器相関グラフを自動生成し、さらに、臓器相関グラフから画像理解手順を自動生成する方法を定式化した。臓器相関グラフの生成においても、画像理解手順の生成、さらには画像理解の手順自体においても、閾値などの手動で設定するパラメータが関与しない方法が定式化された。さらに、事前に各臓器領域の濃淡値分布情報を教師付学習する必要の無い方法も合わせて開発した。 (3)医用画像完全理解システムの大規模データによる評価:上記システムを、11の腹部臓器(肝臓、脾臓、左右腎臓、膵臓、胆嚢、大動脈、下大静脈、食道、胃、十二指腸)に適用し、評価を行った。複数のコントラストの異なる撮影プロトコルで実験を行い、高精度に領域抽出をできることを確認した。また、本システムの現時点での限界点も確認した。股関節CT画像については、血管、神経、軟骨の領域抽出を行い、精度評価を行った。 (4)計算症例モデルの構築と臨床評価:自動領域抽出の結果に基づき、肝線維化を肝臓形状から線維化の自動判定を行う方法に取り組んだ。正常肝臓の個体差の成分と肝線維化に伴う変化に起因する成分を分離する方法を開発し、後者の成分のみで識別機を構成することにより識別精度が向上することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点(2013年度の達成点)では、腹部多臓器の計算解剖モデルと最適領域抽出手順の自動生成法の定式化が達成された。さらに、臓器領域がトレースされた教師付き学習データによらない、同一撮影条件の教師無しの画像データの集合から濃淡統計モデルを自動生成する方法を開発し、消化管を除く腹部8臓器のうち、単純CT画像の胆嚢を除いて、教師無しデータから適切な濃淡統計モデルを生成し、教師付の場合と同等の精度で自動領域抽出が行えることを確かめた。消化管3臓器については、単純CT画像での評価は行っていないが、教師無しデータから作成された濃淡統計モデルを用いて、造影CT画像で自動領域抽出の評価を行ったところ、教師付きの場合よりもわずかに劣る程度であった。これにより、撮影条件が異なる場合でも、手間のかかる教師付学習データの準備が不要になり、方法の汎用性が大幅に高まった。 股関節CT画像については、造影されていないCT画像からの血管領域検出、神経の検出が一定の誤差で可能であることを確かめた。これは、血管と神経が筋肉と関係していることを利用したものである。また、股関節軟骨(骨盤部の臼蓋軟骨)についても、骨盤と軟骨の関係をモデル化した計算解剖モデルを利用することにより、精度良く領域抽出が行えることを確かめた。 自動抽出された臓器領域に対する診断情報・治療情報の生成については、肝線維化を肝臓形状からの識別について、正常個体差の変形成分と疾患のみに起因する変形成分を分離して識別を行う方法を提案し、その有用性を検証した。提案法において、自動抽出した領域を用いた場合でも手法の有用性を確認できたが、効果は小さくなっていた。提案手法は、領域抽出誤差の影響を受けやすいと言えるが、一方で、今後の領域抽出精度の改善により、さらなる精度向上が見込めることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度までは、主に、正常、あるいは、それに近い解剖構造のモデル化と画像からの自動領域抽出を扱ってきた。疾患についても扱ってきたが、正常構造に対する手法の単純適用や部分的な拡張にとどまっていた。2014年度は、疾患を有するデータの扱いを主たるテーマとして取り組む。具体的には、腎腫瘍、慢性肝障害、変形性股関節症について、それらの疾患の明示的なモデル化に基づき、臓器領域、病変領域、関連する解剖構造(血管等)の自動抽出・認識、さらに、疾患の重症度の定量化などのモデル化を行い、それら疾患に最適な方法を定式化する。 2013年度までに開発した計算解剖モデルの表現・構築、医用画像完全理解システムに関するソフトウェアライブラリを、領域内で共有できるように整備・配布する。さらに、これらの基本機能をプラットフォームPLUTOに搭載し、領域外にも公開する。領域で整備したデータベースを利用したより大規模な評価を行う。また、他の計画研究グループの手法と統合して、汎用性および性能を向上させる。
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