研究概要 |
平成22年度の研究成果は,主に以下の四つである. 1.臓器位置の高速検出のためのモデル構築:臓器の位置を自動的に高速で検出するための画像処理手順の設計法を提案し,汎用的な臓器検出手順を構築した.検出手順を660例の体幹部CT画像に適用して,心臓,肝臓,左/右腎臓,および脾臓の位置の検出実験を行った.その結果,従来のアトラス法に比べて,臓器位置の検出精度が大きく向上することを確認した. 2.形状モデルに基づく骨格筋の自動抽出:骨格筋形状モデルに基づく骨格筋の自動抽出法を提案した.提案手法を100症例に適用した結果,手動抽出した領域との一致率が大腰筋領域で72.3%,腹直筋で84.1%であり,有効な結果を得た.よって本手法により,新たな臨床的知見が得られる可能性が示された. 3.椎体検出モデルの構築:肋骨の位置と椎体中央における3つの直交断面のみを利用したシンプルな輪郭モデルを構築した.104症例のCT画像に適用した結果,提案したモデルは個々の椎体の位置の検出に有用であることが示唆された.また,以上の手法で測定した椎体の位置を利用して,CT画像から椎体の骨密度の変化を集約したモデルを構築した.骨粗しょう症の診断支援システムの開発に貢献できると考える. 4.機能画像を用いた糖代謝モデルの構築:FDG-PET体幹部画像における正常な糖代謝を,統計的に表現する「SUV分布モデル」を構築した.このモデルと患者のFDG-PET画像との位置合わせを行うことにより,患者画像のSUVの偏差が計算可能となった.提案手法は,がんの化学療法や全身のがん転移部位の検査の診断支援に役に立つと考える. 以上の「計算解剖モデルの構築」に関する複数の成果によって,提案した手順とモデルの有効性を確認した.
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