研究領域 | 原子が切り拓く極限量子の世界ー素粒子的宇宙像の確立を目指してー |
研究課題/領域番号 |
21104002
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
笹尾 登 岡山大学, その他部局等, 教授 (10115850)
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研究分担者 |
桂川 眞幸 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10251711)
若林 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30273428)
福見 敦 川崎医療短期大学, その他部局等, 講師 (40426656)
吉村 太彦 岡山大学, 理学部, 教授 (70108447)
田中 実 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70273729)
中野 逸夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90133024)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | ニュートリノ質量 / マヨラナ粒子 / マクロコヒーランス / 超放射 |
研究概要 |
以下の計画を本年度の中心的テーマに据え研究を遂行した。(1) 二光子対超放射(PSR)の発見に向け、新たな極低温水素ガス標的の作成及びコヒーランスの高いレーザーシステムの構築を目指す。(2) 光子随伴ニュートリノ(RENP)過程観測に向け基礎実験を進める。(3) 量子干渉効果が高い標的を作製するため、引き続き量子干渉性に関する基礎的な実験研究を進める。(4) 二光子対超放射や光子随伴ニュートリノの理論的研究を発展させる。これらの研究計画に対し以下に述べる成果を得た。(1) 極低温水素ガス標的装置を作成し、その基礎特性を評価する実験を行い、予想する性能である事を確認した。二光子超放射観測実験に必要な高性能トリガーレーザーを作製した。(2) ゼノン(Xe)は光子随伴ニュートリノを観測する上で標的に適した原子である。高品質標的には、(1) 数多くの原子を準安定状態に励起可能なこと、(ii) 原子間及び原子準位間に高い量子干渉性を付加できること、等の性能が要求される。Xeを用いた高品質標的生成の基礎実験を継続した。この結果、超放射とは異なる量子干渉現象が観測された。この現象はASE(Amplified Spontaneous Emission)、SHR(Stimulated Hyper Raman)、FWM (Four Wave Mixing)等の複合現象であろうと考えられている。興味深い知見が得られつつあり、解析を進めている。(3) ビスマス導入マトリックスの吸収分光を進め、前年度発見されたピークの同定、準位・線幅の確定等を行う解析を遂行した。この結果、マトリックス中ビスマスの新たな発光バンドを3本発見し同定することに成功した。バリウム超放射実験、及び極端紫外自由電子レーザー光による励起He原子からの競合超放射実験の解析を継続した。 (4) 理論に於いては、原子核からのニュートリノ対放射がコヒーレント現象であるため、光子随伴ニュートリノ過程に巨大な増大が期待できること明らかにし、この増大率を計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 二光子対超放射の発見に向け、新たに極低温水素ガス標的を作成とコヒーランスの高いレーザーシステムを構築することを目指したが、これを達成した。新規のレーザー作製については論文に纏め出版した。(2) 光子随伴ニュートリノ対放射過程観測に向け、基礎実験を進める事を目指したが、ゼノン原子について実験が進展し、数多くの興味ある現象を観測した。現在解析を進めている。(3) 量子干渉性に関する基礎的な実験研究を進めることを目指した。マトリックス中ビスマス実験については、成果を論文に発表した。バリウム実験についても解析が終了し、論文に纏めている。更に極端紫外自由電子レーザー光による励起He原子からの競合超放射実験については、旧来の理論では説明不可能な事が判明し、新たな理論構築を目指している。(4) 理論に於いては、原子核からのニュートリノ対放射がコヒーレント現象であるため、光子随伴ニュートリノ対放射過程自身にも巨大な増大が期待できること明らかにし、この結果を論文に発表した。その他、二光子対超放射過程のダイナミクス、光子随伴ニュートリノ対放射過程のスペクトル計算とその詳細解析、分子からの光子随伴ニュートリノ対放射過程の遷移確率の解析等を進め、いずれも論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果に基づき、今後の研究方針の柱を以下のように定める。(1) 二光子対超放射過程の発見は、「マクロコヒーランス増幅機構」を実験的に証明する上で極めて重要である。パラ水素分子を標的とした二光子対超放射実験に注力するが、これに必要な極低温標的と高性能レーザーシステムは開発済みである。実際に実験を遂行し、二光子対超放射過程の発見を目指す。(2) 引き続き光子随伴ニュートリノ過程観測に向け、基礎実験を進める事を目指す。この視点での本年度の成果は、ゼノン原子についての実験が進展したことである。様々な量子干渉効果が発現する現象を解明すると共に、更に量子干渉性を高めるためストークスレーザーを照射する。これに必要なレーザーを作製する。(3) 量子干渉効果が高い標的を作製は最終目標である光子随伴ニュートリノ対放射過程観測にとり最重要課題である。引き続き量子干渉性に関する基礎的な実験研究を進めると共に、固体標的も視野に入れ固体標的の基礎実験の進展を図る。(4) 引き続き、二光子対超放射や光子随伴ニュートリノの理論的研究を発展させる。特にソリトン形成の理論やパリティ非保存現象の解明など目指し、研究を継続する。
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