研究領域 | 原子が切り拓く極限量子の世界ー素粒子的宇宙像の確立を目指してー |
研究課題/領域番号 |
21104003
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
川口 建太郎 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (40158861)
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研究分担者 |
唐 健 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40379706)
中川 幸子 岡山理科大学, 理学部, 教授 (10098585)
平原 靖大 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (30252224)
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キーワード | 赤外レーザー分光 / 光章動 / 水素マトリックス / Lamb dip分光 / 量子拡散 |
研究概要 |
本研究では、コヒーレントなパルス光での励起後の、超放射現象をニュートリノ対放射の検出に利用するための基礎的研究を行ってきた。本年度は(1)気体状態で赤外OPOレーザーを用いて、CH_3Br分子のLamb dip分光を行い、レーザーの発振幅、周波数安定性について調査するとともに、分子の超微細構造に関する知見を得た。また赤外・赤外2重共鳴の吸収実験をアセチレン分子で行った。(2)昨年度整備した水素マトリックス装置でHF、DF分子及びその2量体、3量体の赤外スペクトルの観測により、HF、DF分子の固体水素マトリックス中での移動性、反応性を調べ、量子拡散現象が起こっていることを見出した。(3)希ガスマトリックス、フラーレンなどへ埋め込んだN@C60などのターゲットに対して理論計算を行った。(4)CH_3F分子で赤外OPOレーザーを用いたFID信号、フォトンエコーなどコヒーレント現象の観測を続け、横緩和時間のみならず縦緩和時間に関する知見も得た。波長が長いほどコヒーレント現象の観測は容易になるので、可視領域での実験の前に赤外領域での観測により様々なパラメーターを最適化する手法をとることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マトリックス単離法の技術は進展させることができ、標的となる原子や分子をナノ空間に貯蔵できるようになった点では評価できる。また気相でのフォトンエコーの実験がCH_3F分子ではほぼ完結した。
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今後の研究の推進方策 |
これからの2年間に課題に最適なターゲットを実際にマトリックスに埋め込む手法を確立し、さらに固体環境下での量子状態の評価を行う。具体的な系としては、2光子対超放射に対しては、(1)金、銀原子、またそれらの水素化物分子,およびニュートリノ対放射、ニュートリノ対放射過程に対しては(2)H_2CO,H_2CSなどを候補とする。H_2CO,H_2CSでは、スピン・軌道相互作用により励起一重項状態(S_1)と三重項状態(T_1)が混ざっていて、基底状態(S_0)からS_1へ励起後、第二のレーザーでT_1へdumpするStimulated Emission Pumping(SEP:誘導放出励起分光法)でT_1状態へのコヒーレントな分布を実現する。その状態から基底状態への遷移ではニュートリノ対放射の観測に適している。
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