Yb^+とBa^+の単一イオン光時計の周波数比計測から微細構造定数αの時間変化の検出を目指す。京都大学では、まず最初に必要となる、1次ドップラーシフトを取り除くために必要な、イオンを冷却し波長サイズ以下の領域へ閉じ込める技術を確立した。このために、1mmサイズの小型トラップ、光イオン化による単一イオンの導入技術、そして、不要静電場を打ち消してトラップ中心でイオンを冷却するための蛍光とトラップ駆動rf電源との相関を検出する技術を確立した。Yb^+では到達温度を20mK以下と評価し、Ba^+では数個のイオンが配列を組んで静止する結晶化を観測した。磁場によるシフトが小さい奇数同位体の冷却は、<171>Yb^+で結晶化まで進め、Ba^+では光イオン化による同位体選択トラップにまず成功した。Yb^+ではS-D_<5/2>時計遷移用レーザーの線幅を1kHz弱まで狭窄化し、単一イオンで量子跳躍信号を検出した。Ba^+では波長2.05μm時計遷移励起光を差周波混合で発生させた。大阪大学では、高集光効率のための平面型のトラップ電極を作製し、Ca^+を用いた特性評価を行った。主な改良点は(1)トラップポテンシャルが深くなる電極配置設計(2)加工精度を向上のため以前のトラップにあった電極間スロットを無くした構造に変更、である。シミュレーションどおり基板から約400μmの高さにイオンが捕獲され冷却されることを確認した。さらに平面型トラップにおける余剰マイクロ運動の検出方法を確立するための実験を行った。東京理科大学では線幅10kHzの評価用高安定基準共振器を、温度制御超高真空容器に格納、低共振周波数除振台に設置し、線幅数百kHzの光源を用いて、線幅50kHz以下であることを評価した。この基準共振器に安定化する線幅100Hz用外部共振器型半導体レーザー光源の試作を行った。
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