研究領域 | 多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究 |
研究課題/領域番号 |
21105002
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
堺井 義秀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (90170571)
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研究分担者 |
宮林 謙吉 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (40273833)
中野 英一 大阪市立大学, 理学研究科, 准教授 (80275239)
渡辺 靖志 神奈川大学, 工学部, 教授 (40126199)
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キーワード | テトラクォーク / エキゾチックハドロン / Bファクトリー / ハドロン物理 / ハドロン分光学 / ペンタクォーク / 新共鳴粒子 |
研究概要 |
本研究では世界最高輝度を誇る高エネルギー加速器研究機構(略称KEK)の電子・陽電子衝突型加速器におけるBファクトリー実験(Belle実験)で蓄積された高統計データを解析し、新たなエキゾチックハドロンの探索とその性質の体系的な解明を中心とした新しい観点でのハドロン物理解析を展開する。 Belle実験はこれまでに、エキゾチックメソン(テトラクォーク)の候補X(3872)を世界で初めて発見し、Bファクトリーのデータによるハドロン物理の新しい領域を拓いた。さらに、B中間子崩壊のみならず電子・陽電子衝突過程など様々な生成反応でエキゾチックハドロンの候補を発見し、確定的な証拠となる電荷を持つZ(4430)+の発見するなど、世界をリードしてきた。 本年度は、拠点の一つである奈良女子大学にこれまでに導入した専用のデータ解析用計算サーバーやディスクアレイシステムをさらに有効に活用するため、研究員を雇用し、解析に専念するとともに計算機システムの活用および環境の整備に努めた。もう一方の拠点のKEKでは引き続き研究員を雇用することにより解析の促進に努めた。 本年度は、解析では、Υ(5S)→h_bπ^+π^-崩壊過程でのh_b粒子の発見をもとに、その崩壊過程の詳細研究を進め、h_bπ^+に崩壊する荷電をもちボトムクォーク対を含むエキゾチックハドロンZ_b(10610)とZ_b(10650)二個を発見した。また、Z_b(10610)とZ_b(10650)は、Υ(5S)→Υ(nS)π^+π^-(n=1,2,3)崩壊過程でも発見された。X(3872)粒子の電磁崩壊分岐比や角度分布の解析から量:子数を特定する成果をあげた。さらに、ωφやφφを用いてストレンジクォーク領域への拡張が進んでいる。 これらの解析は、Belleと本領域の研究者と密接な協力により進められているが、Belleの原子核研究者グループ(NPC)と定期ミーティングにより解析の議論を深め連携を強化している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボトモニウム領域のハドロン探索の成果として、Υ(5S)でのデータを使ってhb粒子を発見した。さらにこれらの崩壊構造から、Υ(nS)π^±およびhbπ^±に崩壊する荷電ボトモニウム粒子Zb(10510)^±とZb(10560)^±を発見した。チャーモニウム領域では、二光子反応におけるJ/ΨωおよびJ/Ψφ生成での新共鳴粒子の発見や、X(3872)粒子の電磁崩壊分岐比や角度分布の解析から量子数を特定する成果をあげた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に従って、これらの研究から継続的に物理成果を発信し続ける。Bファクトリーの大量データの解析を精力的に進め、エキゾチックハドロンの構成形態を明らかにする。特に、理論研究から予言されているチャームやボトムを含んだ安定なエキゾチックメソンやバリオンの探索や、新しい解析手法の開発を進め物理解析の幅を広げる。豊富な実験データが得られるなかで、これまで以上に理論と実験、そして理論研究間の連携を強める。一方で、新しいなデータの理解に向けたブレーンストーミングも進めていく。
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