研究領域 | 多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究 |
研究課題/領域番号 |
21105003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野海 博之 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10222192)
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研究分担者 |
堀田 智明 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (30332745)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | エキゾチックハドロン / ハドロン / レーザー電子光 / ハドロンビーム / クォーク / バリオン / 共鳴状態 / 偏極光子ビーム |
研究概要 |
本研究は、Θ+やΛ(1405)といったストレンジクォークを含むバリオンのエキゾチックな状態について生成から崩壊まで包括的に測定し、その属性(質量、幅、内部自由度)を明らかにする。SPring-8のLEPS実験は最低5つの構成クォークからなるペンタクォークΘ+を世界で初めて見出した。このような従来にないエキゾチックな状態の存在形態を明らかにすることにより、従来の単純なクォーク模型を超えたハドロン形成の新しい描像を得ることができる。ハドロン内の構成クォークやクォーク・反クォーク及びクォーク・クォーク相関に対する理解を深め、クォーク閉じ込めとハドロンの質量獲得の機構解明への糸口をつかむ。今年度の成果は以下のとおりである。 (1)γd→K-K+X反応について、従来より2.6倍高統計のデータの解析が終了した。(g,K-)反応の欠損質量スペクトルからΘ+を示唆するピーク構造は再確認されたがピークの統計的優位性は下がった。しかしながら、スペクトル中には、Θ+生成に関与しない、重水素(d)中のpと反応した事象が相当数含まれることがわかった。こうした反応を選別して除去するとピークが顕著になることが発見された。pと反応した事象を効率よく除去できるよう装置を改良し、Θ+についてさらなるデータを取得する。 (2)米国ブルックヘイブン国立研究所(BNL)のK中間子稀崩壊実験用検出器(E949検出器)移送を完了し、検出器の組み立てを行った。LEPS2実験施設にビームが初めて通り、ビームコミッショニングが行われ、ガンマ線検出器とTOF検出器による最初の実験が開始された。 (3)J-PARCにおけるK中間子ビームを用いたΛ(1405)分光実験の準備がほぼ整い、実験実施可能段階(Stage-2)であると認定された。さらに、ハドロンビームを用いたハドロン物理研究の展開として、チャームバリオンに関する新しい実験研究が提案された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)高統計データの解析によりΘ+がスペクトルが再確認されたこと。 (2)LEPS2施設に最初のビームが出て、共同利用実験の開始できる段階に到達したこと。 (3)J-PARCでKビームを用いたΛ(1405)分光実験が実験実施段階(stageー2)として認定されたこと。 以上のとおり、異状な構造をもつバリオンの研究について、新しい知見や展開が得られており、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究方針をおおむね維持し最終年度に向けて次の通り研究を進める。 (1)LEPSにおける光子ビームを用いたエキゾチックハドロンのデータ収集と解析を進める。 (2)LEPS2の大立体角検出器の一層の充実を図り、共同利用実験研究を展開する。 (3)J-PARCにおいてハドロンビームによるハドロン分光に関する研究を展開する。
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