研究領域 | 多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究 |
研究課題/領域番号 |
21105006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
保坂 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10259872)
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研究分担者 |
菅沼 秀夫 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10291452)
原田 正康 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40311716)
森松 治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (60210184)
竹内 幸子 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (90251503)
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研究期間 (年度) |
2009-07-23 – 2014-03-31
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キーワード | エキゾチックハドロン / フレーバー / 重いクォーク / ハドロン分子 / 複合性 / カイラル対称性 / 閉じ込め |
研究概要 |
研究としては当初の計画通り、まず重いクォークを含むハドロンの解析を継続した。重い中間子複合系の研究を拡張し、高スピン、および正負パリティー状態まで拡張し分光の理論予言を進めるとともに、崩壊過程では重いクォーク対称性から導かれる選択則を導いた。束縛状態や共鳴状態の複合性を議論する枠組みを提案し、従来のカイラル模型で議論されてきた共鳴状態の性質を解明した。閉じ込め機構の解明に向けてはWilson loopを用いた格子QCDによる数値シミュレーションに加え、Polyakov loopを用いた解析的な研究を開始し進めている。核子の非摂動手法としてホログラフィック模型を採用し、ベクトル中間子の無限項が形状因子に寄与する機構を解明した。また、パートン分布を用いてハドロンのエキゾチックネスを計測する手法を考案中である。 昨年度に引き続き、素粒子分野の研究者を主とする、格子QCD研究者とのクロスオーバー研究会を開催し、第一原理に基づいた研究と、我々の領域研究で主として展開する有効理論による研究を議論した。その結果、今後もこの様な異なる手法に基づいた意見交換の重要性を確認した。 若手育成としてのサマースクールを継続した。今回から国際スクールとし、特にアジア圏からの学生を受入れることとし、韓国・台湾からからそれぞれ2名、1名の参加があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに定式化された、重いクォークを含むハドロンの性質に関する理論研究には、多くの発展的な課題が予想されていた。今年度はその方向での成果が得られた。また、クロスオーバー研究会の継続開催により、素粒子、原子核分野から一層ハドロン物理の重要性と興味を確認することができた。 実験研究との関係では、いくつかの理論研究によって選択則などの普遍的な結果が得られたことから、観測に向けての具体的な議論が深まった。また、JPARCにおける新たなハドロン物理に向けた議論を開始することができた。 以上の理由で、当初の計画に盛り込まれた内容は確実に達成するとともに、新しい展開も見られたことから(2)の評価を与える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けてこれまでの研究成果をまとめると共に、次の発展に向けた議論を強化していく。(1)重いクォークを含むハドロンに関しては、崩壊の性質に関して幾何学的な選択則に加え、動力学的な側面を考慮して定量的な説明を試みる。(2)X(3872)に関して、DD*複合成分とccbarコア成分の混合に関する定量的解析を進め、生成崩壊の理解の解明に向ける。(3)ホログラフィックな方法で核物質などの性質解明をすすめ、物質中でのハドロンの理解を進める。(4)閉じ込め機構に関して解析的な手法を進める。(5)パートンのエキゾチックな構造分布に向けた研究を進める。 サマースクールは引き続き国際形式とし、アジア圏からの参加を受け入れる。 これまでの領域活動全体をまとめるための国際会議「HADRRON2013」を主催し、これまでの成果を世界に発信すると共に、LHCなど、各国のから期待される最新の結果を交えた議論をすすめる。
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