計画研究
本研究の目的は、各種有機イオン種の寿命および反応性を系統的に明らかにするとともに、そのデータに基づいて、ワンポット法(時間的集積化)やフロー法(空間的集積化)を用いて活性な有機イオン種を生かしたまま逐次的に反応を行う集積化合成法を開拓することである。本研究では、有機イオン種の寿命や反応速度を評価し、そのデータに基づいた反応集積化法を設計・構築する。なお、有機イオン種の安定性・反応性に関する知識の蓄積は有機化学の深化をもたらし、それに基づく反応集積化は化学合成の効率を飛躍的に向上させると予想される。平成23年度は以下のような成果を得た。有機カチオン反応の集積化カチオンプール法により発生させたデンドリマー状カチオンをポリスチレンと反応させる有機カチオン反応の集積化について検討を行い、デンドロナイズドポリマーを得ることに成功した。また、さらにデンドロナイズドポリマーに官能基を導入する反応についても検討を行い、窒素官能基を有するデンドロナイズドポリマーの合成に成功した。有機アニオン反応の集積化有機アニオン反応のフロー型集積化およびその実践的応用について、とくに通常有機リチウム種と速やかに反応すると考えられている求電子性官能基を有する不安定有機リチウム種に焦点をあて検討した。フローマイクロリアクターを用い、滞留時間を極めて短く精密に制御することにより、有機リチウム種を発生させ、それが分子内のケトンカルポニル基と反応する前に、後で加えたアルデヒドと素早く反応させるという、従来の常識を覆す分子変換を実現した。本法を利用して、天然物ポリフェノールの一つであるPauciflorol Fの形式全合成に成功した。本成果はNature Communications誌に掲載され、世界的に注目を集めた。
2: おおむね順調に進展している
カチオン反応においては、その時間的集積化によりデンドラナイズドポリマーなど機能性材料の合成にまで展開できるようになった。また、アニオン反応においては、フローマイクロリアクターの特長を生かして、従来法では達成不可能な分子変換を達成したとともに、その空間的集積化に展開した。さらに、他大学の計画班員の研究者と連携して、機能性分子の効率的合成も開発した。
有機カチオン反応の集積化による糖鎖合成やデンドリマー合成など合成的応用についてA02,03班のグループと連携して標的化合物の合成にも着手し、その中でより実践的な手法へと進化させる。また、有機アニオン反応の集積化においても、A02班およびA03班の研究グループと連携して、生物活性化合物や機能性化合物など有用な有機化合物の効率的フロー合成を行い。領域形成の意義の実証に貢献する。フロー・マイクロリアクターの利用については、本計画研究の研究者は十分習熟しているので、それを他の研究者に広めるべく、共同研究をさらに強化する。とくにA02班およびA03班の研究者との共同研究を積極的に行う。
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