研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 潤一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30127170)
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研究分担者 |
野上 敏材 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60402963)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機合成 / 炭素カチオン / 炭素アニオン / 有機電解 / フロー合成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、各種有機イオン種の寿命および反応性を系統的に明らかにするとともに、そのデータに基づいて、ワンポット法(時間的集積化)やフロー法(空間的集積化)を用いて活性な有機イオン種を生かしたまま逐次的に反応を行う集積化合成法を開拓することである。平成24年度は以下のような成果を得た。 有機カチオン種を中間体とする電解酸化法と化学的酸化法の開拓について検討を行った。電解酸化により発生させた炭素カチオン種をジメチルスルホキシド(DMSO)により捕捉することによってDMSO酸化の活性中間体であるアルコキシスルホニウムイオンへと変換し、さらにトリエチルアミンで処理することによりカルボニル化合物を得る反応について、反応の適用範囲を明らかにした。また、DMSO共存下でBu4NBrを電解酸化することによって新規カチオン性Br—DMSO活性種を発生できることを見出した。そして、これをアルケンと反応させることにより、アルコキシスルホニウムイオンへと変換できること、及びそれをトリエチルアミンと反応させることによりカルボニル化合物に変換できることを見出した。 有機アニオン反応の空間的集積化およびその実践的応用を検討した。とくに、フローマイクロリアクターを用い、ハロゲン-リチウム交換反応により発生させた官能基を有する各種アリールリチウム種のシュウ酸ジアルキルに対する付加を検討したところ、選択的に1:1で反応させることができα-ケトエステル化合物が良好な収率で得られることを見出した。また、フローマイクロリアクターを用いることにより、トリフルオロメチル置換ビニルリチウム種の発生および親電子剤との反応を効率的に行えることも見出した。また、本中間体を利用した多成分カップリング反応への展開も行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
有機カチオン反応の時間的集積化について、DMSO共存下でBu4NBrを電解酸化することによって新規カチオン性Br—DMSO活性種を発生できることを見出した。この反応については、当初、計画していなかったが、研究の進展の中から立案し、実験から発見することができた。そして、この活性種をアルケンと反応させることによりルコキシスルホニウムイオンへと変換できること、及びそれをトリエチルアミンと反応させることによりカルボニル化合物に変換できることを見出した。このように当初の計画以上に進展している。 有機アニオン反応の空間的集積化については、計画していた反応について期待していた実績をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
カチオン反応の集積化については、平成24年度に得られたBr—DMSO活性種の発見に基づいて、さらに他の活性種の開拓とそれを用いた反応集積化を検討し、研究を推進していく予定である。 アニオン反応の集積化については、現在の方針に従って、研究を推進していく予定である。
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