研究概要 |
キラルなロジウム(II)錯体を用いたイリド形成を引き金とする不斉触媒反応の開発とそれらを機軸とする生物活性天然物の触媒的不斉合成を検討し、本年度は以下の成果を得た。 1.Rh_2(S-TCPTTL)_4存在下、トリクロロエチルエステル由来のエステルカルボニルイリドとN-メチルインドールとの分子間不斉1,3-双極付加環化反応を行うと、目的とするエキソ配置を持つインドール誘導体が収率良く得られ、最高97%の不斉収率を記録した。この結果は、エステルカルボニルイリドとインドールとの分子間不斉1,3-双極付加環化反応の初めての例である。 2.分子内にインドールおよびエステルを組み込んだα-ジアゾ-β-ケトエステルの分子内不斉1,3-双極付加環化反応を行うと、エンド配置を持つ五環性化合物が最高90%の不斉収率で得られることが判明した。この結果は、インドールを求双極子剤とするエステルカルボニルイリドの分子内不斉1,3-双極付加環化反応としては初めての成功例である。さらに、付加環化体のシクロプロパン環の開環および生じたビニルエーテルから三環性エノンへの変換を行った。 3.α-ジアゾ-β-ケトエステルをカルボニルイリド前駆体、フェニルアセチレン誘導体を求双極子剤とする逆電子要請型分子間不斉1,3-双極付加環化反応、続くアルケンの立体選択的水素化を機軸とするデスクライニン等の含酸素多環式天然物の触媒的不斉合成を達成した。 4.分子内に二重結合をもつ環状アセタールを組み込んだα-ジアゾ-β-ケトエステルの分子内オキソニウムイリド形成/[2,3]-シグマトロピー転位にRh_2(S-TFPTTL)_4を用いると最高92%の不斉収率で2,8-ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン誘導体が得られることが分かった。
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