研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106007
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
関根 光雄 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (40111679)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロフロー系反応 / 固相合成 / U1snRNA / エキソン・スキッピング / 筋ジストロフィー医薬 / 人工核酸 / ホスホロチオエート / 3重鎖形成核酸 |
研究実績の概要 |
本年度以降は、リボヌクレオシドの2′水酸基部位に2-(N-メチルカルバモイルエチル)基(MCE基)を導入したRNAに、これまで開拓してきた修飾塩基をはじめアデニン塩基に新しく分子設計した修飾基を組み込んだ人工核酸の固相合成法を検討した。その結果、塩基部位に2-チオウラシル塩基を導入すると、ホスホロチオエートに誘導する段階で副反応が生じることが判明した。この問題については、次年度以降に対応する予定である。アデニン塩基の代わりに、2-アミノアデニン塩基を含む2'-O-MCE-RNAを筋ジストロフィー医薬として合成したが、結果的にエキソン・スキッピング活性が低かった。この理由については、この修飾塩基が細胞内酵素で脱アミノ化されグアニン塩基に変わってしまうため標的mRNAに逆に結合できなくなるためと考えている。3重鎖形成核酸の合成については、4-チオチミン塩基と6-チオグアニン塩基を用いるパラレルモードで3重鎖形成できる新しい人工核酸の固相合成を検討した。この際、5′下流側の塩基と強いスタッキング作用を起こすチオカルボニル基をチミン塩基とグアニン塩基に導入するが、合成工程でとくに、ホスファイト中間体の酸化反応条件に工夫を凝らし達成することができた。さらに、これまでの研究から見いだされたウリジン誘導体のマイクロ合成系による新規核酸塩基部のアシル化反応を拡大し、様々な核酸合成に用いられる合成中間体をこのマイクロ合成フローシステムを最大限活用した。さらに、スプライシングに必須な核内小分子RNAであるU1snRNAの全合成のため、5'-末端部位のトリメチググアノシンキャップ構造をもつオリゴマーを連続反応を用いる固相合成法を活用し、合成することができた。このオリゴマーとRNAトランスクリプトを連結して、U1snRNAを世界で初めて人工合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工修飾核酸の合成に、連続合成が可能な最新の固相合成法を導入し、これまで高効率で様々な目的物を合成することに成功し、この連続固相合成に必要な新しいリン酸化反応も独自で開発したものであり、この領域では世界をリードした研究成果を得ることができた。とくに三重鎖形成核酸の創成については、チオカルボニル基を導入した新規化合物が、極めてすぐれた二重鎖DNAに結合できることを見いだしている。この知見は、今後この核酸医療の分野でブレークスルーする十分な可能性をもっている。さらに、連続固相合成の極みとして、核内小分子RNAであるU1snRNAの全合成を達成できたことは、核酸合成化学では高く評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標はかなり達成しているので、今後は、我々が推進してきた連続固相合成法のよいところを最大限活用し、U1snRNAを人工的に改変したものをいくつか合成し、これによって新しい筋ジストロフィー治療薬開発へ研究を進展していく方針である。また、修飾塩基を含む2'-O-MCE-RNAの合成に関しては、2-チオウラシル塩基を導入する際、ホスホロチオエート化反応の段階で副反応が起こってしまっていることが判明したので、この副反応を生じない新規反応系を検索していく方針である。また、三重鎖形成核酸の合成については、連続固相合成法の新技術を用いて、高効率合成を達成していきたい。最後に、この合成された三重鎖形成核酸の細胞内で核内透過機能を高めた新規分子についても合成を検討していく予定である。
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