昨年度に引き続き、N-結合型糖タンパク質糖鎖合成を目的としてマイクロフロー系を用いた糖鎖合成について検討するとともにマイクロフロー系を用いたカチオンリビング型重合反応によるポリシアル酸の合成について検討した。 シアリルガラクトース構造ならびにポリシアル酸構造の効率的な構築のために、通常のフラスコを用いたバッチ式反応装置とマイクロミキサーとフラスコを連結させた新型装置を用いて対応するグリコシル化反応について検討を行った。シアリルα(2-3)ガラクトースならびにシアリルα(2-6)ガラクトースについては、シアル酸として天然型のN-アセチルノイラミン酸誘導体を糖供与体に用いるとグリコシル化反応の選択性が良くなく、対応するグリカールを多量に副生することが常識であったが、どちらの反応装置を用いても、活性化剤であるルイス酸を加える際の混合と温度制御を厳密に実施することで、高選択的に目的のαグリコシドを高収率で与え、副反応を抑制できることを見出した。これはルイス酸を加える際に発生する局所熱のために立体選択性が低下し、副反応成物を与えることを示唆している。一方α(2-9)ジシアル酸ならびにα(2-8)ジシアル酸については、N-アセチル誘導体ではグリカールを与えるのみであったが、N-アジド誘導体を用いることで高収率かつ高選択的なα(2-8)およびα(2-9)ジシアル酸構造の構築に成功した。これらの場合も厳密な混合と温度制御が重要であることがわかった。なお大量合成については、マイクロフロー系を用いた効率的連続ミキシングを適用することで容易に行うことが可能であった。またマイクロフロー系を用いたポリシアル酸合成については、α(2-9)構造について5糖までの合成に成功している。 糖鎖のチップへの導入法を確立し、作成した糖鎖チップを用いてインフルエンザウイルスやレクチンとの相互作用解析を行った。
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