研究概要 |
1,5–ヒドリドシフトを鍵反応とする連続不斉中心の構築とPd触媒を用いたメチルケトンの分子内アルケニル化によるタキサン骨格の構築を活用する(-)-taxolの形式的不斉全合成を検討した。(-)-taxolのA環とC環のフラグメントのカップリングは収率95%で単一の生成物を与えた。生成物の立体選択的エポキシ化により得たエポキシドにBF3•OEt2を作用させると1,5–ヒドリドシフト-ベンジリデン形成反応が連続的に進行した。この反応条件下ではエトキシエチル基の脱保護が一部進行するので、引き続きエトキシエチル基を脱保護した。生成物の1級水酸基を選択的にDess-Martin酸化し、続いて残った2級水酸基をTES基で保護し、アルデヒドへのMeMgIの付加、生じたアルコールのDess-Martin酸化によりメチルケトンを合成した。このメチルケトンのPd触媒を用いた分子内アルケニル化反応は速やかに進行し、所望の環化体を収率96%で与えた。この化合物は数工程を経てNicolaoouらの(–)–taxolの合成中間体へ変換することができ、その構造確認と形式的不斉全合成を達成した。α、β-不飽和カルボニル化合物の反応から開始するタンデム1、4-付加反応の研究においては、渡環型Diels-Alder反応を組み合わせることにより天然物合成の有用な中間体を立体選択的に合成することに成功した。同一時空間反応集積化法としてα-ジアゾ-β-ケトジフェニルボスフィンオキシドの触媒的不斉分子内シクロプロパン化を検討した。その結果、反応は高エナンチオ選択的に進行し泉高90%_の生成物を与えることを見出した。
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