研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106009
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中田 雅久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50198131)
|
研究分担者 |
丹羽 節 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30584396)
|
研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | タンデム反応 / 集積合成 / 不斉合成 / 立体選択的反応 / 生物活性物質 |
研究実績の概要 |
Liebeskind-Sroglカップリング‐分子内Diels-Alder反応により三環式化合物を得る手法を開発した。本手法を数種類の基質に適用した結果、単一生成物を与えるケースをいくつか確認した。構造解析の結果,主生成物の縮環部位はいずれもシスの関係であった。α-ジアゾケトンの分子内シクロプロパン化に続く立体選択的アルキル化,シクロプロパンの位置選択的開裂によりPPAP類合成の鍵中間体を合成し,その鍵中間体からnemorosone,garsubellin Aの全合成に成功した。高エナンチオ選択的な不斉エポキシ化を触媒する非ヘム鉄(Ⅲ)錯体を見出した。カルバゾール由来の三座配位子(CAZBOX)のカチオン性鉄(Ⅲ)錯体の2電子酸化により,鉄(Ⅳ)カチオンラジカル錯体が発生する。CAZBOXはポルフィリンと比較して合成の容易さ,構造設計の柔軟さを有しているため,不斉環境を備えたポルフィリンの代替配位子の可能性が示された。アリールボロン酸を用いるイミド合成法を見出した。アルケニルボロン酸,アルキル9-BBNを利用した反応を経由しても高収率でイミドが得られる。ホウ素化合物の代わりにスズ化合物も利用できる。2価の銅塩とビスオキサゾリン配位子からなる錯体を触媒として用いると,α‐アルキリデンβ‐ケトイミドと種々のジエンの[4+2]付加環化反応は全炭素四級不斉中心を含む付加環化生成物を高収率で高エナンチオ選択的に与えた。また,細見-櫻井反応も高エナンチオ選択的に付加体を与えることを見出した。α‐ジアゾ‐β‐ケトホスフィンキシドの触媒的不斉分子内シクロプロパン化が高いエナンチオ選択性で進行することを見出し,得られたシクロプロパンから5工程の位置,立体,化学選択的変換を含む,保護基を用いない9工程により,糖尿病治療薬候補,(+)-colletoic acidの世界初不斉全合成を達成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アニオン活性種を経由する反応集積化として、マイケル反応により発生させたエノラートの分子内連続マイケル反応により、全炭素四級不斉中心を含む連続不斉中心を持つ六員炭素環を構築する手法を確立しているので、この手法とLiebeskind-Sroglカップリング‐分子内Diels-Alder反応を組み合わせた多環式天然物の合成手法を確立しつつある。カチオン活性種を経由する反応集積化として、酸触媒によるメトキシシクロプロピルケトンの位置選択的な開裂を鍵反応とするPPAP類の中心骨格の立体選択的構築を達成し、nemorosone,garsubellin Aの全合成を達成している。遷移金属活性種を経由する反応集積化として、カルバゾールを母核とする不斉三座配位子とFeCl3より得られる不斉鉄(Ⅲ)錯体を活用する新規触媒的不斉エポキシ化反応の開発に成功した。また、これまでに蓄積した触媒的不斉分子内シクロプロパン化(CAIMCP)の知見をもとに、α‐ジアゾ‐β‐ケトホスフィンキシドの触媒的不斉分子内シクロプロパン化の開発に成功し、糖尿病治療薬候補、(+)-colletoic acidの世界初不斉全合成を達成した。イミドを活用する反応集積化として、Pdを用いるα-アルキリデン-β-ケトイミドの新規合成法を開発し、α-アルケニル-β-ケトイミドを新規触媒的不斉[4+2]型反応へ活用できることを見出し、さらなる同一時空間反応集積化として、細見-櫻井反応の不斉触媒化にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
アニオン活性種を経由する反応集積化と生物活性天然物の合成を推進する。マイケル反応により発生させたエノラートの連続分子内マイケル反応によって、全炭素四級不斉中心を含む連続不斉中心を持つ六員炭素環を構築する手法を確立しているので、この手法を別途開発したLiebeskind-Sroglカップリング‐分子内Diels-Alder反応と組み合わせることにより、cisplatinに匹敵する強い抗腫瘍活性を示すent-kauranoidの主炭素骨格の立体選択的構築と不斉全合成を検討する。また、この連続マイケル反応の不斉触媒化を目指す。カチオン活性種を経由する反応集積化として、触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応と酸触媒によるメトキシシクロプロピルケトンの位置選択的な開裂を鍵反応とするPPAP類の中心骨格の立体選択的構築の開発とPPAP類の不斉全合成の達成を目指す。また、反応性が高く取り扱いが困難であったオルトキノンを活用する天然物合成を検討する。さらに、電解合成を組み入れたフローシステムを利用し、クリーンな状態で発生させたオルトキノンを利用する触媒的不斉合成への展開を目指す。遷移金属活性種を経由する反応集積化として、トランス縮環多環式天然物の効率的合成に向けて、三重結合活性化を起点とする立体選択的ポリエンイン環化を検討する。イミドを活用する反応集積化として、向山ーマイケル反応、[2+2]型反応の不斉触媒化も検討する。
|