研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷野 圭持 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (40217146)
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キーワード | 生物活性物質 / 全合成 / 有機金属 / 付加環化反応 / 中員環 |
研究概要 |
多官能性天然有機化合物の全合成においては,工程数の短縮が成功の鍵を握ることから、環骨格形成において複数の炭素-炭素結合を一挙に形成する反応集積化手法の開発を目指した。具体的には、高次構造天然物タキサン類を合成標的とし、それらに含まれるビシクロ[6.4.0]ドデカン骨格を・アセチレンジコバルト錯体の[6+2]型付加環化反応により構築する計画である。なお、タキサン類はイチイ科植物に含まれるテルペノイドであり、特にタキソールは乳ガン等の治療薬として利用されている。まず、安価なケトールとメチルプロパルギルエーテルから得た付加体をピナコール転位反応によりケトンに変換後、エノールシリルエーテルを経てアセチレンジコバルト錯体を合成する方法を確立した。続いて、ルイス酸存在下でコバルト錯体とエノールシリルエーテルの[6+2]型付加環化反応を行い、BC環部に対応するトランスビシクロ体を立体選択的に合成した。生成物を還元的脱錯体化反応に付してアルケンに変換後、ケトンへの立体選択的付加反応とオレフィン部の立体選択的酸化反応を経てエポキシドを合成した。コバルトサレン触媒を用いて末端アルケンのヒドロシアノ化反応を行い、得られたニトリルを塩基処理すると分子内環化が進行してA環部6員環が構築された。A環部の歪んだ橋頭位二重結合の導入は困難とされているが、この問題は次の方法を開発して解決した。すなわち、Chugaev法を用いてアルコールをアルケンへ導いた後,エポキシドに酸化した。これをLDBBで処理するとシアノ基の還元的除去とエポキシドの開環が一挙に進行し、ABC環モデル化合物の合成が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タキサン骨格の構築法については、ABC環モデル化合物の合成に成功した。すなわち、アセチレンジコバルト錯体と6員環エノールシリルエーテルとの[6+2]型付加環化反応が、BC環の一挙構築に極めて有効であることを明らかにした。さらに、エポキシニトリルの分子内環化反応によるA環構築と、エポキシニトリルの還元的開環反応による歪んだオレフィン部の導入法も開発している。このように、タキサン類の全合成に繋がる重要な知見が得られ、研究は極めて順調に進展している。一方、もう一つの合成標的に予定していたCP-263,114については、記載すべき結果が得られなかったため、合成標的をコルネキスチンに変更することにした。
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今後の研究の推進方策 |
タキサンのABC環モデル化合物の合成に成功したため、次年度からタキサン類に属する天然物タキシンBの全合成を目指す。 そのためには、BC環部の核間位メチル基の導入が必須となるため、[6+2]型付加環化反応に用いるエノールシリルエーテルに予めメチル基を導入しておく計画を立案した。環化体の合成に成功すれば、これまでの知見に従い、シアノアルキル側鎖の導入、B環オレフィンのエポキシドへの酸化、および分子内環化反応によってA環を構築する予定である。 これと並行して、9員環骨格上に無水マレイン酸部位を有する天然物コルネキスチンの全合成研究に着手する。まず、アセチレンジコバルト錯体とフラン誘導体の[5+4]型付加環化反応を確立した後、続く渡環エーテル部の開裂を
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