研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷野 圭持 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40217146)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機化学 / 集積合成手法 / 付加環化反応 |
研究実績の概要 |
多官能性天然有機化合物の全合成においては,工程数の短縮が成功の鍵を握ることから、環骨格形成において複数の炭素-炭素結合を一挙に形成する反応集積化手法の開発を目指した。 タキサン類の合成に関しては、アセチレンジコバルト錯体とエノールシリルエーテルの[6+2]型付加環化反応を基盤として、ABC環モデル化合物の集積合成に成功している。そこで24年度は、BC環部に含まれる核間位メチル基の導入法について検討し、メチル基を導入した6員環ジエンの[6+2]型付加環化反応が円滑に進行することを見出した。次に、環化体の脱錯体化反応を経て得られた中間体からのタキサン骨格構築を目指した。核間位のシロキシ基を還元的に水素原子に置換することは不可能であったため、酸性条件下での脱離反応により共役ジエンに導いた。トシルアミノ基の立体選択的導入により得たアリルアミン誘導体に、窒素原子のアミノ化とシグマトロピー転位を経由する新手法を適用し、トランスビシクロ[6.4.0]ドデカノンに変換した。C環オレフィンを選択的に修飾して得た中間体をエポキシニトリルに導き、分子内環化反応によるA環構築を検討中である。 一方、9員環上に無水マレイン酸を含むユニークな天然物コルネキスチンの全合成研究にも着手し、以下の成果が得られた。まず、プロピル側鎖を省略した9員環モデル化合物の合成を行うこととし、3-シロキシフランとアセチレンジコバルト錯体の[5+4]型付加環化反応を行った。環化体のシリル基を除去して対応するジケトンに誘導後、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)を作用させてコバルト錯体部位を無水マレイン酸に変換した。生成物をジエステルに変換後、アミンおよびシリルトリフラートを作用させると渡環エーテル部が開裂することを見出し、プロピル側鎖を除きコルネキスチンに対応する全ての炭素骨格を備えたモデル化合物を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自の高次付加環化反応を基軸とするタキサン類およびコルネキスチンの全合成研究を展開し、集積合成手法を鍵とする基本骨格構築法を確立した。前年度までにモデル検討を終えたタキサン骨格構築に関しては、BC環部核間位メチル基の導入に成功し、全合成に立ちはだかる最難関の一つを乗り越える成果を得た。 また、9員環上に無水マレイン酸を含むユニークな天然物コルネキスチンの合成研究に関しては、着手して1年で基本骨格の構築に成功しており、プロピル基を導入した原料から出発することで全合成に到達できると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、独自の高次付加環化反応を基軸とする高次構造天然物タキサン類およびコルネキスチンの全合成研究を展開し、基本骨格の集積合成に成功した。これらの成果を踏まえて最終年度は、各々の全合成を完成させる予定である。
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