研究概要 |
フローマイクロリアクターによる空間的集積は、アリレンジハライドの選択的なモノリチオ化と、生じた活性種の異なる求電子剤との段階的な反応を可能とする。このようにして非対称性を導入されたヘキサアリールエタン誘導体では、対称型化合物には見られない特異な物性の発現や構造的特徴を示すことが期待される。23年度には、標題化合物を効率的にフロー合成し、対称型化合物のみの研究では明らかにできなかった極度に伸長したC-C結合長への置換基効果についての詳細な検討を行った。5,6-ジブロモアセナフテンを出発物とし、フローマイクロリアクターによってBuLiと4,4'-ジメトキシベンゾフェノンを段階的に反応させる際の条件検討を行い、混合後のリアクター長を最適化することで、74%の収率で一置換体を選択的に合成することできた。次に、先の最適条件を用いて、3種類の非対称二置換体a, b, c(置換基X, Y)の合成を行った。いずれもXとしてアニシル基とし、aではYとしてトリル基、bではYとしてフェニル基、cはではYとしてクロロフェニル基を持つケトンを用いてフローマイクロ合成を行い、非対称置換ジオール体の粗生成物を得、環状エーテルとして精製し、それぞれ良好な収率で得ることに成功した。得られた環状エーテルを強酸性脱水条件下でジカチオン塩とした後、THF中でZn還元することにより、目的の非対称1,1,2,2-テトラアリールピラセンを76%、81%、75%の収率で得た。これらはいずれも安定な薄黄色結晶であり、蒸気拡散法でX線構造解析に適した単結晶を得て、低温X線構造解析により、その詳細な分子構造を決定することに成功した。
|