研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106013
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
北川 敏一 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183791)
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研究分担者 |
平井 克幸 三重大学, 社会連携研究センター, 准教授 (80208793)
岡崎 隆男 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90301241)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 三重項カルベン / 有機強磁性体 / ポリカルベン / 立体保護基 / ジアゾメタン / デンドリマー / 薗頭カップリング反応 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
本研究では、長寿命三重項ジアリールカルベンに対応するモノジアゾ化合物を反応集積化の手法を活用して多数結合し、ポリジアゾ化合物を合成する。これを光照射により脱窒素化することにより高スピン安定ポリカルベンを発生させ、その磁気特性を評価する。平成24年度はこの目的で研究を進め、以下の成果を得た。 1.モノジアゾ化合物のカップリング反応によるポリジアゾ化合物の合成 カップリング反応の継手となる置換基と立体保護基を併せ持つジフェニルジアゾメタンの薗頭カップリング反応を行い、ネットワーク構造を持つポリジアゾ化合物を合成し、その光照射脱窒素により高スピンポリカルベンを発生することに成功した。原料のモノジアゾ体の構造を変えることにより重合度が5及び約70のポリジアゾ体が得られ、それぞれに極低温条件で光照射してポリカルベンを発生させた。SQUID測定の結果、スピン量子数がそれぞれS = 4.39、18.1と求まり、高スピン種が発生していることが確認された。 2.イオン液体中での薗頭カップリング反応による集積合成 ジアゾ化合物のモデルであるケトンを用いて2段階の薗頭カップリング反応をワンポットで行い、第2世代デンドリマー型トリケトンの合成を検討した。平成24年度は第1段階の薗頭カップリング反応まで到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.モノジアゾ化合物のカップリング反応によるポリジアゾ化合物の合成 予定したポリジアゾ化合物が薗頭カップリング反応による重合で合成でき、これを基にポリカルベンを発生することができた。得られたポリカルベンは安定で、ESR、SQUID等の測定が可能であった。しかし重合度70のポリカルベンはスピン量子数が18.1であり、理論値70より低かった。これは分子中にカルベンの欠陥があることを示しており、理論的に予想される高スピン状態にするための検討が今後の課題となった。 2.イオン液体中での薗頭カップリング反応による集積合成 得られた結果により、今後目的のデンドリマーを合成するための準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
スピン量子数Sが小さくなった原因として、分子中のカルベンユニットの部分的欠損が考えられる。強磁性相互作用している70量体ポリカルベンの中央部分で1か所でも欠損が発生すると相互作用が途切れ、Sは約1/2に減少してしまう。わずかな欠損によりスピン量子数が大幅に減少するため、今後ポリマー化に際してジアゾ基の損傷及び光照射時の不完全脱窒素とカルベンの二次分解を極力低減すれば高スピンポリカルベンが実現できると期待される。
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