研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
21106014
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保 孝史 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60324745)
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研究分担者 |
蔵田 浩之 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (40263199)
平尾 泰一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50506392)
松本 幸三 専修大学, 経営学部, 准教授 (40311766)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 集積合成 / グラフェンナノリボン / オリゴチオフェン / 二次元シート構造 |
研究実績の概要 |
H24年度の目標: グラフェンにはジグザグ端に局在スピン状態(エッジ状態)が発生することが知られているが,その起源の解明とその特殊な状態に由来する特異な物性探索を目的として,グラフェンの構造要素となる化合物の合成ルート開発を行う。また,オリゴチオフェン類については、かご型の化合物の収率の向上を目指した合成ルートの改良を実施する。 H24年度の成果概要: グラフェンナノリボンの合成については、共同研究者と共に、二光子吸収を利用したオリゴアンスリル体の効率的縮環反応の検討を行ったが,適切な条件を見出すに至っていない。一方,ペリアセン類については,昨年度に確立したビスアンテンの大量合成のメリットを活かして,アラインとのDiels-Alder反応の検討を重ね,水平方向に共役を伸長させた数多くの化合物合成に成功した。同一時空間反応集積化の概念を活かした、グラフェンナノリボンの精密合成につながる成果といえる。かご型オリゴチオフェンについては、これまで最終段階の収率の低さが問題であったが,反応条件を厳密にコントロールすることで,満足のいく収率でかご型オリゴチオフェンを合成することに成功した。 今後の展望: ビスアンテンの水平方向へのπ拡張法の開発により,ペリアセン類の合成法確立へ一歩近づいたといえる。今後は,ペリアセンにつながるような適切なアライン前駆体を設計・合成し,ビスアンテンとアラインのDiels-Alder反応でジグザグ端リッチなナノグラフェン分子の合成に挑む。そのような化合物は,一重項マルチラジカル性を帯びると予想され,実際のジグザグ端グラフェンナノリボン(ZGNR)の電子状態により近づくことから,実際のZGNRの磁気挙動の分子論的解釈につながると期待される。一方,オリゴチオフェンについては,確立したチオフェン連結反応を基に,新たな環状分子の合成に挑む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノグラフェンの研究については、グラフェンの構造要素となる化合物として、今年度はペリアセン類の合成法の開拓を目標としていた。昨年度に確立したビスアンテンの大量合成のメリットを活かして,アラインとのDiels-Alder反応の検討を重ね,水平方向に共役を伸長させた数多くの化合物合成に成功した。この研究成果により、ペリアセンを合成するめどが立ったことから、研究は順調に進展していると判断できる。 一方、オリゴチオフェンについては、これまで最終段階の収率の低さが問題であったが、反応条件を厳密にコントロールすることで,満足のいく収率でかご型オリゴチオフェンを合成することに成功した。その結果、大量合成が可能となり、単結晶のX線構造解析にも成功したことから、研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ビスアンテンの水平方向へのπ拡張法の開発により,ペリアセン類の合成法確立へ一歩近づいたといえる。今後は,ペリアセンにつながるような適切なアライン前駆体を設計・合成し,ビスアンテンとアラインのDiels-Alder反応でジグザグ端リッチなナノグラフェン分子の合成に挑む。そのような化合物は,一重項マルチラジカル性を帯びると予想され,実際のジグザグ端グラフェンナノリボン(ZGNR)の電子状態により近づくことから,実際のZGNRの磁気挙動の分子論的解釈につながると期待される。一方,オリゴチオフェンについては,確立したチオフェン連結反応を基に,新たな環状分子の合成に挑む。
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